ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
40/94

ソロモン諸島は1978年英国から独立しましたが、イギリス連邦(Commonwealth of Nations)の加盟国であり、また豪州やカナダと同様に英国女王を国家元首とする英連邦王国(Commonwealth realm)の1国でもあります。議会は1院制で議席数は50、任期は4年、国会が首相を選出して首相が閣僚を任命する議院内閣制を採用しています。1990年代後半から2000年代前半にかけて発生した民族紛争により国内が混乱、2003年には豪州を中心とするRAMSI(Regional Assistance Mission to Solomon Islands)が派遣されましたが、治安回復・国家機能の回復が図られ、2017年6月末をもってRAMSIは無事に撤収したところです。一方、バヌアツは英仏共同統治下より1980年に独立しました。イギリス連邦の加盟国ですが、ソロモン諸島のように英連邦王国ではありません。大統領を元首とする共和制を採用し、行政の実権は首相にあります。議会は1院制で議席数は52、任期は4年となっています。政権基盤は脆弱でしばしば政権交代が発生しています。なお両国とも軍隊は有していません。ソロモン諸島の公用語は英語ですが、現地語と英語が混ざってできたピジン語(Pidgin)が共通語となっています。バヌアツの公用語は、英語・仏語・ビスラマ語(英語と仏語が混ざり変化して生まれた言語)になります。2.3 経済・主要産業等所得水準は、国連から後発開発途上国(LDC, Least Developed Country)と認定され、海外からの援助に依存しているソロモン諸島・バヌアツ・キリバス・ツバルで低くなっていますが、高所得国に分類されるパラオのような国もあります。主要産業についても、観光業の盛んなパラオ・フィジー・バヌアツ、天然資源に恵まれ鉱業の盛んなPNG(原油・液化天然ガス・金・銅)・ナウル(リン鉱石)、林業の盛んなPNG・ソロモン諸島、漁業権収入が歳入の3割程度を占めるキリバス・ミクロネシア連邦と、様々です。なお、バヌアツはタックスヘイブン(租税回避地)としても知られています(私は担当するまで知りませんでしたが)。バヌアツが独立する前の1971年、まだニューヘブリディーズ(New Hebrides)と呼ばれていた時代に、英国が主導して、オフショア金融センターの仕組みを整えたそうです。近年では、フィンテック企業の誘致に力を入れているところです。2.4 外交関係外交関係は、ミクロネシアの3カ国(パラオ、マーシャル諸島、ミクロネシア連邦)を除く、多くの国が豪州・ニュージーランド(NZ)と密接な協力関係にあり、経済的・人的支援を受けています。ミクロネシア3国は、1914年から1945年まで日本の委任統治下にありましたが、戦後は米国との関係が深くなり、経済支援の代わりに軍事権を米国に委ね、軍地基地を米国に貸与することを決めた自由連合盟約(コンパクト)を締結しています。中国・台湾との関係では、全世界で台湾と国交を持つ17カ国のうち、6カ国が太平洋の島嶼国(ソロモン諸島・キリバス・マーシャル諸島・パラオ・ナウル・ツバル)です。近年、太平洋の島嶼国をめぐって、中台日米豪の外交戦が活発化しており、各国首脳の同地域への訪問が相次いでいます。ソロモン諸島では、本年4月に発足したソガバレ政権が台湾との国交の見直しに言及し、年末までに外交方針を決定することから、当局の判断に関心が高まっています。他方、バヌアツは、近年中国との関係を強化しており、2018年11月にPNGの首都ポートモレスビーで開催されたAPECに合わせて、中国が提唱する広域経済圏構想「一帯一路」に関する覚書を締結しました。青々とした海が広がるバヌアツの首都ポートビラ(筆者上空より撮影)3IMFと4条協議3.1 IMFとはIMFは、1944年7月に開催されたブレトン・ウッズ会議で調印された「国際通貨基金協定(IMF協定)」に36 ファイナンス 2019 Sep.SPOT

元のページ  ../index.html#40

このブックを見る