ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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陶磁器のことをさらにより深く知りたければ、多治見市のセラミックパークMINOの中にある岐阜県現代陶芸美術館を訪ねてみよう。そこでは国内外の陶磁器の名品が数多く展示されているだけでなく、芸術作品も置かれており、陶磁器の持つ多様な可能性を知ることができる。9岐阜の良さ岐阜の良さは、スーパーマーケットで鮎を売っていること…ではなく、「地域のコミュニティの元気さと強靭さ、そして人の良さ」であると考えている。私のようなヨソモノに対して、「田舎だから全然何もないですよ。」と過度に謙遜することもなく、「どちらから来はったんです? 東京? それは田舎からよぉこそ。」と言うこともなく、自然体で接してくれるのが嬉しい。コミュニティの元気さの例として、街の公園が挙げられる。岐阜県に来て驚いたのだが、街中にたくさんある公園に小さな無料プール(正式には徒渉池と言うらしい)が付いているのだ。夏になると、小さな子供たちの歓声がこだまし、近所に住む我々まで元気になる。初めてプールを見たときは、うちの息子もテンションがMAXになり、「毎日来る!!!」と叫んだものだった。新聞によれば、こうしたプールの清掃・管理から子供の見守りに至るまで、近隣の自治会の方々が担っておられるとのこと。確かに、近所の公園でもおじいさんが見守ってくれていた。なかなか運営が難しい地区もあるようだが、こんなことが可能であることが「地域のコミュニティの元気さと強靭さ」を表わしていると言えよう。(あと、自治会主催の運動会というものが各地区にあり、皆さん、ものすごく熱心に取り組まれる。)また、これは岐阜県に限らないことかもしれないが、ただ岐阜県に関しては確信を持って言えるが、東京と比べて「一人一人の存在感が違う」。大人であっても子供であっても、大勢の中の一人として扱われるのではなく、「◯◯さん」として、何をするにも注目されるし、頑張れば認めてもらえる。これは、特に子供にとって非常に素晴らしいことではないかと思う。子供の教育においては「自己肯定感を育む」ことが最も重要と言われる。水泳大会に出場してメダルをもらったり、夏休みの自由研究で賞状をいただいたりして、うちの息子2人はすっかり調子に乗ってスクスク育っているが、いろいろな点で認めていただくことによって自己肯定感を育んでいるということになるのではないかと思う。幼少期の子育てにおいては環境が重要であるが、紀元前の孟母三遷を持ち出すまでもなく、子供にとって良い環境を考えるのであれば、岐阜県への移住は十分検討に値するものであろう。さらに、「森のようちえん」という取組がある。全国各地で取り組まれているが、岐阜県立森林文化アカデミーの准教授にして、2019年JOLA(ジャパン・アウトドア・リーダーズ・アワード)大賞を受賞した萩原・ナバ・裕作先生が率いているものをご紹介したい。美濃市にある森林文化アカデミーで開催されている「森のだんごむし」。森林文化アカデミーの生涯学習部門に位置づけられ、未就学児を対象に、広大な演習林を拠点に3年間開催される。すでに12年目になるというが、根強い支持を得ている。萩原准教授は、慶應義塾大学を出て世界中を放浪した末、森林文化アカデミーに逢着したという変わった経歴を持つ人物であるが、私がお会いしたときも、常に子供たちがまとわりついており、人、特に子供を引き付けてやまない魅力を醸し出しておられる。インターネットで活動の様子が見られるので是非ご覧いただきたい。我が家はうまく年齢が合わなかったが、もし合えば絶対に参加させたいと思うような魅力的なプログラムであり、このために岐阜県に移住しようと考える方がおられても決して驚かない。これまで縷々書いてきたような様々な体験を家族みんなでできる、ということからも、「子育てするなら岐阜県」であることは個人的にも実感しているところである。▪10清流の国ぎふ岐阜県を象徴するのが清流である。標高3000メートル級の山岳地帯から、海抜ゼロメートル地帯まで、清流は県内を縦横に流れ、人々の暮らしと一体化している。私が初めて岐阜県に来たときの印象もそうだ。夏の暑い盛り、岐阜市のレンタサイクル(1日100円)で岐阜駅から長良地区に向かう途中、長良橋の上から長32 ファイナンス 2019 Sep.SPOT

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