ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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元のお嬢さん方がお金を出し合って引き幕を寄贈したという。幕には寄附者75人の名前が染められていて微笑ましい。渡合温泉に泊まることがあれば、翌日は明治座を見学した後、中津川市の苗木城跡を散策されることをお勧めしたい。苗木・遠山家が戦国時代から明治に至るまでこの地方を治めた山城だ。天然の巨岩を利用した石垣が残っており、天守跡からは360度の大パノラマ、中津川市街から、恵那山、木曽川まで一望できる。別名「霞ヶ城」の名のとおり、秋の早朝であれば、木曽川からの霧が立ち込め、幻想的な景色が見られるかもしれない。熱心なボランティアガイドさんに詳しく解説していただいたのだが、「最近は「岐阜の宝もの」にも認定されたし、城跡もしっかり整備したので、観光客がものすごく増えているよ。今日はこれで3回目のガイドツアーだ。」と笑っておられた。余談だが(余談しか書いていないが)、お土産には、付知と中津川市街の中間ぐらいにある、恵那醸造の「鯨くじら波なみ」という日本酒がおいしい(注:蔵元からは何の謝礼も受け取っていない)。海のない岐阜県でなぜか鯨という名前のお酒。きれいな飲み口で、するすると飲めてしまう。山奥にひっそりと佇む蔵元が少量を手作りで作り続けておられる。杜氏さんは、東京滝野川にあった大蔵省醸造試験場で研修を受けられたそうだ。中津川というと、「岐阜県の一番東にあるところ。」というぐらいの印象しかない方が多いかもしれないが、素晴らしい観光資源の宝庫であることをさらに広めていきたい。6虫ムシ蟲岐阜県の自然が豊かだということは周知の事実であるが、その結果として、山奥まで行かずとも、家の近くでもいろいろな昆虫を採ることができる。そういう意味で、岐阜県は小学生の息子2人にとって天国のようなところだ。春はチョウ。山県市の奥の方に行き、ミヤマカラスアゲハ、ウスバシロチョウなどを採集した。また、家の近くの柑橘系の木を探すと、アゲハチョウの幼虫がたくさん見つけられる。家に持って帰って幼虫を飼っていると、ほどなくして家の壁にくっついて蛹になり、順番に羽化していく。蛹が割れてチョウが姿を現し、徐々に羽を広げていくのだが、間近で見るアゲハチョウの羽の鮮やかさは筆舌に尽くしがたい。夏はカブトムシ、クワガタ。長良川の河川敷の林や金華山など、近くの里山で採ることができる。採集して丁寧に飼っていると、秋には卵を産む。我が家でも、去年飼っていたカブトムシが生んだ卵が孵り、腐葉土を交換しながら幼虫を育てると、6月には蛹になり、その後、成虫になった。今後、おそらく卵を産むだろう。恐怖の無限ループである。「ぜったい僕がお世話するから。」という子供の言うことを信じてはいけない。霧吹きで土に水を吹きかけたり、腐葉土を交換したりといったお世話は、我が家では結局母親が主にしていた。また、クワガタに関しても、ノコギリクワガタを飼っていた飼育ケースを春になって見てみたら、なんと幼虫が。クワガタの幼虫は朽ち木で育つので、どうしていいのやらと調べたところ、倒木を菌が分解したものをエサとしている模様。そして、おが粉に人工的に菌糸を植え付けた「菌糸ビン」なるものがクワガタの幼虫飼育用に発売されていることが判明。早速、鵜飼大橋の南にある「クワガタ村」という店で菌糸ビン(約400円)を購う。店の主人に聞いたところ、カワラタケというキノコの菌糸を生やしたものだという。夏以外のシーズンに里山を散策していて折れて朽ちた枝などを見かけたならば、慎重に解体してみよう。菌糸が生えているような枯れ枝の中で、コクワガタの幼虫を見つけることができるはずだ。私も実際に何匹も見つけた。あとは、椎茸を栽培していたクヌギやコナラのホダ木で、もう使わなくなっているものが狙い目だ。秋はバッタやカマキリ。伊吹山の麓でいろいろな昆虫を採集した。こうした昆虫採集には、先達というか指導者が必要なのだが、岐阜県には世界に誇る「名和昆虫博物館」がある。ここの昆虫採集ツアーに参加すれば、捕虫網の使い方から、三角紙にどのようにチョウを入れるのか、標本をどのように作るのかまで、名和館長にしっかり教えていただける。「チョウの羽が傷つかないように、三角紙にはこういう方向で入れてください。」、「トンボの場合は三角紙に入れてすぐに殺してしまうとお腹が腐ってしまうので、しばらく生きたままにしてください。」、「こういう朽ち木の中にクワガタの幼30 ファイナンス 2019 Sep.SPOT

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