ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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0はじめに岐阜県を離れて既に数か月。疲れたときにふと頭に浮かぶのは長良川の清流であり、青空に映える伊吹山などの山並みである。私は、高村光太郎の書く駝鳥のような眼をしながら、「東京に空がない」とつぶやくのだった。。。それはさておき、「清流の国ぎふ」について、2017年11月号、2018年11月号と書いてきたが、本稿をもってシリーズの締めくくりとしたい。今回も、岐阜県の素晴らしさ、奥深さについて存分に記していきたい。当然ながら、すべて個人的見解である。1蛍ほたるいし石岐阜は「山の国」である。森林だけでなく鉱物資源にも恵まれている。例えば、ニュートリノの観測で世界的に有名になったカミオカンデ(飛騨市神岡町)があるが、これはもともと神岡鉱山の跡地を利用した実験施設である。神岡鉱山は奈良時代から採掘が行われていた記録があり、江戸時代には天領として幕府が直轄で管理していたが、近代になって三井金属が大規模に亜鉛、鉛、銀などを採掘していたという。余談だが、その亜鉛等の輸送のため神岡鉄道が整備され運行していたが、トラック輸送への転換とともに2006年に廃線となった。その線路を町の活性化のために有効活用できないか、という地元関係者の熱い想いから「レールマウンテンバイク・ガッタンゴー」が誕生した。これは線路の上を特別な自転車で漕いでいくツアーなのだが、真っ暗なトンネルあり、坂道あり、高架ありと、ルート上はバラエティに富んでおり、ハイシーズンには予約が取れないほどの人気アトラクションとなっている。私も家族で参加したが、ガタンゴトンという振動を感じながら線路をマウンテンバイクで走るのは、子供のころに見たルパン三世のアニメの一場面のようで、理屈抜きに楽しい。一緒に乗った子供たちも、キャーキャーはしゃいでいた。地域活性化を目指すNPO法人神岡・町づくりネットワークが運営を行っており、まさに地方創生のお手本と言えるのではないだろうか。閑話休題。下呂市金山町に、蛍石を採掘していた鉱山跡があり、そこで「ミネラルハンティングガイドツアー」が開催されているので家族で参加した。簡単に言えば、鉱山跡で蛍石を拾うことができるツアーだ。場所は笹洞鉱山跡、日本最大の蛍石鉱脈があったところ。蛍石とは、紫外線を当てると光るという性質を持った、半透明の美しい石だ。英語だとフローライト。ガイドさんによればラテン語の「流れる」という言葉からこの名前がついたらしいのだが、何が流れるのかと言えば鉄鉱石。製鉄のときに鉄鉱石と蛍石を一緒に熱すると、融点が低くなるという効果があるので、その目的で世界各地で採掘されているという。ちなみに、「蛍光」は英語でフローレセントと言うが、このフローライトに由来する。本来の蛍石は完全に無色透明であり、高級カメラのレンズなどに用いられるそうだが、そこに不純物であるレアアースが染み込んで様々な色に蛍光するのだという。なお、「蛍石」という名称は昔から付いていたが、それは紫外線で光るからではなく、加熱すると淡い青色を発して光るからであり、実際、ガイドさんが蛍石を熱して実演してくれた。蛍石の鉱脈はちょうど下呂市と関市の間にあり、それを関市側から掘ったのが平岩鉱山、下呂市側から掘ったのが笹洞鉱山、両鉱山合わせて年間13000トンもの蛍石を産出していた。日本の蛍石産出量の70%以上を占めたという。集合場所から車と徒歩で移動して鉱山跡へ。車のナンバーを見ると、姫路やら伊豆やら、全国各地から来ておられる。坑道跡近くでガイド「清流の国ぎふ」から~子育てするなら岐阜県~岐阜県前総務部長 坂口 和家男26 ファイナンス 2019 Sep.SPOT

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