ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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平成30年度決算が令和元年7月31日に公表された。以下、平成30年度決算の歳入のうち、税収の概要について紹介する。なお、文中意見にわたる部分は、筆者の個人的な見解であり、筆者の属する組織の見解ではない。1ポイント平成30年度決算税収は60兆3,564億円であり、前年度から1兆5,689億円増加した。基幹3税(所得税、法人税、消費税)が前年度同様そろって増収し、これまでの最高額であった平成2年度の60兆1,059億円を超え、過去最高である。平成30年度補正後予算額(59兆9,280億円)との比較では、所得税を中心に4,284億円上回った。なお、所得税の増加要因は、大口の親子間配当に係る源泉所得税(0.4兆円)が主な要因であり、後段で記述のとおり、30年度限りの一時的な押し上げ要因である。2主要な税目〈所得税〉※税収全体の約3割所得税は19兆9,006億円である。前年度から+1兆190億円増加し、補正後予算額を+4,256億円上回った。好調な雇用・所得環境を背景に給与税収が増加したことに加え、一時的な大口配当の影響により配当税収も増加したことによる。【給与】〈源泉分・申告分〉給与税収は11.7兆円である。前年度から+0.4兆円増加し、ほぼ見込み通りである。雇用・所得環境を見ると、雇用者報酬は対前年度比+2.8%の増であり、雇用者数(対前年度比+1.8%)と一人当たり雇用者報酬(対前年度比+0.9%)がともに増加している。【配当】〈源泉分〉配当税収は5.0兆円である。前年度から+0.8兆円増加し、補正後予算額を+0.5兆円上回った。後段で記述のとおり、大口の親子間配当に係る源泉所得税(0.4兆円)は、30年度限りの一時的な押し上げ要因と考えられる。〈法人税〉※税収全体の約2割法人税は12兆3,180億円である。前年度から+3,227億円増加し、補正後予算額を+220億円上回った。3月期決算の上場企業(金融を除く全産業約1,600社)の経常利益の伸び率は、対前年度比+1.9%の増加であり、好調な企業業績を背景に法人税収も堅調に推移した。〈消費税〉※税収全体の約3割消費税は17兆6,809億円である。前年度から+1,670億円増加し、補正後予算額を▲1,421億円下回った。その構成を見ると、国内取引に係る収納(国税庁分)が17.7兆円(対前年度+0.2兆円)、輸入取引に係る収納(税関分)が5.2兆円(同+0.3兆円)、輸出等に係る還付が▲5.2兆円(同▲0.3兆円)であった。個人消費の動向を見ると、民間最終消費支出は対前年度比+0.8%の増であり、29年度の伸び率(同+1.4%)を下回ったものの、堅調に推移している。財貨・サービスの輸入は対前年度比+6.5%の増(出典注釈)であり、昨年度から引き続き増加している。品目別の輸出入動向をまとめた貿易統計(確報)によると、30年度の輸入は、全体で82兆3,041億円であり、+7.2%増加している。特に、原粗油、液化天然ガスといった鉱物性燃料が増加しており、その価額は+17.5%増加した。また、財貨・サービスの輸出についても、対前年度比+2.1%の増であり、昨年に引き続き増加した。平成30年度決算税収について主税局総務課主税企画官 尾﨑 輝宏/課長補佐 田中 雅敏22 ファイナンス 2019 Sep.SPOT

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