ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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「シャンティイ」という地名を聞いて何を想起するだろうか。競馬好きの人はシャンティイ競馬場、お菓子好きの人はホイップクリームの一種であるクレーム・シャンティイ、あるいは、相当な美術好きならばコンデ美術館に思い至るかもしれない。残念ながら私の場合はそのどれでもなく、「シャンティイ」と聞いてピンと来たものはなかった。それでもどことなく、記憶の片隅に引っかかる響きであった気がしなくもなかったが、こういったことはよくある気のせいだろうと思っていた。シャンティイには、ルネサンス時代に建てられた美しい城がある。歴史を感じさせるクリームイエローの城壁に、青く映える屋根が印象的な建物である。私は兵庫県姫路市の出身であり、世界遺産・姫路城を毎日見て育ったこともあって、城の美しさには一家言あると思っている。今回の出張でも、議長国仏がわざわざ会議の場所として選んだ城とはどんなものか見てやろうという野次馬根性が混じっていたわけだが、実際にシャンティイ城を見た時に感じた印象はまさに「壮麗」であった。また、同時に私の中で閃くものがあった。私は遥か昔からこの城を知っていたのである。とはいえ、城好きが高じて写真を見たことがあったというわけではない。実は、姫路城とシャンティイ城は1989年に姉妹城提携を結んでいるのだ。姫路で育った身としては、駅や市民会館といった場所で日常の折に触れて見聞きしていた城であった。一方で、地方で育った当時の私にとっては、「カタカナの地名」というのは現実感の無い存在であった。時が経ち、思えば遠くまで来たものだと感慨深い気持ちになった。シャンティイは、馬が有名ということからも容易に想像できるように、パリから車で一時間ほどではあるが、長閑な牧草地が広がっており、都会の喧騒から離れ休暇を勤しむのに適した土地である。願わくは、次に赴く際には牧草地を走る馬を眺めながらゆったりとした時間を過ごしたい。出張者小話 ファイナンス 2019 Sep.21G7シャンティイの概要について SPOT

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