ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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3国際課税福岡G20及び大阪サミットにおいては、経済の電子化に伴う課税上の課題への対応に関し、BEPS包摂的枠組みによって策定された2つの柱からなる野心的な作業計画が承認され、2020年までのコンセンサスに基づく解決策のため取組を更に強化することが合意されていた。G7においても、現行の国際課税の枠組みについて、その原則を損なうことなく改善する必要があることを考慮し、経済の電子化がもたらす課税上の課題及び現行の移転価格税制の短所に対処することが差し迫ったものであると合意された。したがって、上記の大阪サミットにおいてG20首脳によって承認された作業計画に基づき、2つの柱から成る解決策を2020年までに採択することが完全に支持された。麻生大臣からは、今後は作業計画に沿って、2020年1月に制度の大枠に合意することを目指し、BEPS*2包摂的枠組み及びG20において2つの柱を並行して議論することが重要であると発言があった。なお、2つの柱について、議長総括で言及された点は下記のとおりである。第1の柱については、企業が何ら物理的存在なしに域内で事業を行うことができる高度に電子化されたビジネスモデルなどの新たなビジネスモデルに対処するため、新たなネクサスルール*3を開発すべきで、さらに、特に販売活動の移転価格については、税の安定性を強化し、過度なタックスプランニングを制限すべきであること、第1の柱の下の新たな課税権は、貴重な無形資産や高度に電子化されたモデルの活用など、市場またはユーザーが所在する国・地域におけるビジネスの積極的な活動のレベルを反映した基準を参照して決定することが考えられ、これについてOECDが更によく検討すべきであることが言及された。さらに、新しいルールは執行可能で簡素なものとすべきであり、二重課税を防止し国際課税システムの安定性を確保するため、強制的仲裁を通じた強固かつ効果的な紛争解決制度をグローバルな解決策の一要素とする必要があるとされた。*2) Base Erosion and Prot Shifting(税源浸食と利益移転)*3) 各国の非居住者たる企業に対する課税権の決定ルール*4) Global Intangible Low-Taxed Income(外国子会社の無形資産から生じる所得)について課税を強化する制度第2の柱については、例えば米国のGILTI制度*4のように、最低限の水準の実効的な課税が、企業の公平な税負担の確保に資するものとなるということ、税率の水準はルールの具体的な制度設計に依存することが合意された。20 ファイナンス 2019 Sep.SPOT

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