ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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2019年7月17日~7月18日にかけて、フランスを議長国として、フランス・シャンティイにて、G7財務大臣・中央銀行総裁会議(以下「G7」)が開催された。日本からは麻生副総理兼財務大臣と黒田日本銀行総裁が出席し、2日間にわたり、世界経済、ステーブルコイン、国際課税など、広範な分野にわたって議論が行われた。本稿では、主な議論の概要を紹介したい。1世界経済今回のG7は、G20福岡財務大臣・中央銀行総裁会議(「福岡G20」)及び第14回金融・世界経済に関する首脳会合(「大阪サミット」)が開催された後、主要先進国が初めて一堂に会して議論を行う機会であった。世界経済に関しては、福岡G20及び大阪サミットで確認された世界経済の基調判断、すなわち、来年にかけて経済成長が回復するという見通しが概ね維持されているという認識が共有された一方、リスクが依然として下方に傾いていることに留意すべきとされた。何よりも、貿易と地政を巡る緊張が増大してきた点について議論がなされた。また、適切な場合にはさらなる行動をとることを含め、引き続きこれらのリスクに対処し、国際的な協力及び枠組みを強化することに合意するとともに、強固で持続性があり均衡のとれた包摂的な成長を実現し、下方リスクから守るために全ての政策手段を用いるとのコミットメントを再確認した。麻生大臣からも、基調判断が概ね維持されていることを歓迎するとともに、貿易を巡る緊張の激化は、米中首脳会談によって回避されたものの、引き続き重要*1) 6月29日の大阪首脳宣言では、暗号資産に関し、注意深く進展を監視すること、生じつつあるリスクにも警戒を続けること、FSBその他の基準設定主体に必要な対応の助言を求めることを、新たに合意した。な下方リスクであり、保護主義的な措置による内向き政策は、どの国の利益にもならず、自由で公正な貿易を通じて世界経済の成長を高めていくことが重要であると発言があった。なお、日本議長下のG20においてプライオリティに掲げられているグローバル・インバランスについても、政策立案者が世界の成長を支える方法で過度なグローバル・インバランス(経常収支不均衡)を縮小するために努力するべきであることが合意された。2ステーブルコイン及びその他の様々な金融商品6月18日に、フェイスブック社が主導するリブラ協会がリブラについてホワイトペーパー(概要書)を公表した。ホワイトペーパーによれば、リブラは「価格変動率が小さい暗号通貨」(いわゆるステーブルコイン)とされている。この構想が実現すれば、安くて早い送金が可能となるなどの利用者にとっての潜在的な利便性を指摘する声もある一方、その詳細が未だ明らかでない部分が多く、様々なリスクや課題が指摘されている。ステーブルコインについては、現在、各国当局、国際機関等が対応について検討しているところであり、G20大阪サミットに続いて*1、今回のG7においても議論が行われた。まず、金融セクターにおける技術革新は大きな便益をもたらしうるが、それらはリスクも伴うものであると認識された。また、リブラを含め、ステーブルコイン及びその他の現在開発されている様々な金融商品は、深刻な規制上ないしシステミックな懸念とともG7シャンティイの 概要について(2019年7月17日~7月18日開催、於フランス・シャンティイ)国際機構課長 緒方 健太郎18 ファイナンス 2019 Sep.SPOT

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