ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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1令和2年度概算要求基準の基本的な 考え方我が国の経済・社会にとって、人口減少・少子高齢化や、生産性の向上、地域の活性化といった喫緊の諸課題への対応が求められる一方、財政については公的債務残高がGDPの2倍程度に累積するなど極めて厳しい状況にあり、経済再生と財政健全化の両立が急務となっている。このため、令和2年度予算においては、「経済財政運営と改革の基本方針2019」(以下「基本方針2019」という。)を踏まえ、それぞれの予算において、我が国の成長力を確保しつつ、引き続き「新経済・財政再生計画」の枠組みの下、手を緩めることなく本格的な歳出改革に取り組んでいく方針である。このような基本的な考え方の下、「令和2年度予算の概算要求に当たっての基本的な方針について」(以下「令和2年度概算要求基準」という。)は本年7月31日に閣議了解されたが、同日の臨時閣議後の記者会見において、麻生財務大臣は、「令和2年度の予算におきましても、経済再生と財政健全化の両立を図るために、本格的な歳出改革を更に進めていきたいと考えております。日本はご存じのように、人口減少・少子高齢化という大きな課題に直面しております。今こそ、経済社会の構造改革を加速して、こうした課題を解決した上で希望ある社会をつくっていかなければならないのは当然ですが、まずはこの概算要求基準を踏まえて、各省に要求段階から『新しい日本のための課題推進枠』も活用し、予算の中身を抜本的に見直していただきたいものと考えております。そのうえで、財務省としては予算編成過程において、各省としっかり議論を行わせていただいて、『令和』という新しい時代にふさわしい質の高い予算というのをつくってまいりたいと考えております。」と述べておられる。すなわち、令和2年度概算要求基準は、安倍内閣発足後の6年間の仕組みと基本的に同様としつつ、「新経済・財政再生計画」の内容を踏まえたものとしており、具体的には、1)昨年までと同様、予算の総額について、概算要求基準において決定するのではなく、予算編成過程において、「新経済・財政再生計画」を踏まえて決定する仕組みとしている。2)要求・要望においては、裁量的経費について、前年度予算よりも削減した額を要求することとしつつ、「基本方針2019」などを踏まえた諸課題に対応するため、「新しい日本のための優先課題推進枠」として別途要望を可能とする等、弾力的な仕組みとしている。3)予算編成過程においては、歳出全般にわたり、これまでの安倍内閣の取組を基調とした効率化を行い、施策の優先順位を洗い直し無駄を徹底して排除しつつ、予算の中身を大胆に重点化していくこととしている。令和2年度概算要求基準のイメージは右図のとおりであり、その具体的内容については2以降で説明する。2要求・要望について(1)年金・医療等年金・医療等に係る経費については、令和元年度予算額に、高齢化等に伴ういわゆる自然増(5,300億円)を加算した範囲内で要求することとしている(本増加額については、経済再生やこれまでの改革等の効果を引き続き適切に見込んでいる)。年金・医療等に係る経費について、「経済・財政再生計画 改革工程表」に沿って着実に改革を実行していくことを含め、合理化・効率化に最大限取り組み、「新経済・財政再生計画」において示された「社会保令和2年度概算要求基準の概要主計局総務課主計官 寺岡 光博10 ファイナンス 2019 Sep.SPOT

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