ファイナンス 2019年9月号 Vol.55 No.6
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立会官は災害査定官とともに 現地で災害復旧事業費を決定災害復旧事業の査定立会はどのように行われるのか。被災した施設等の管理者(地方公共団体等)はまず、被災箇所の復旧事業計画を策定し、施設を所管する主務大臣(農林水産省、国土交通省等)に対して、災害復旧事業費を申請する。申請を受けた主務省は、災害現地に係官(災害査定官)を派遣し、災害復旧事業費の査定を行う。災害現地では、申請した地方公共団体等が申請内容について説明を行う。一方財務局は、財政を所管する財務省の立場から係官(立会官)を災害現地に派遣。立会官は、災害の状況や災害復旧事業費の調査を行い、災害査定官とともに現地で国庫負担・補助の対象となる災害復旧事業費を決定する。関係者が現地に集合し、その場で災害復旧事業費を決定することで、より迅速な災害復旧が可能になる。災害査定立会制度は、昭和26年のルース台風による災害復旧事業費の査定に際し創設(昭和26年10月16日閣議決定)され、その後、今日に至っている。実は、災害査定立会制度ができた背景には、昭和25年9月に発生したジェーン台風の被災で起きたいわゆる天狗橋事件があると言われている。消防白書によると、ジェーン台風の被害は9月3~4日の2日間で死者398名、行方不明者141名、負傷者2万6,062名、住家全壊1万9,131棟、半壊10万1,792棟、床上浸水9万3,116棟、床下浸水30万8,960棟に達した。このとき台風による被災を装い、災害復旧事業として、石川県手取川に架かる木造つり橋「天狗橋」を、鉄骨の永久橋に架け替えようとしたものであり、これを契機として、査定の厳正公正を期するために災害査定立会制度が創設された。近年の自然災害の増加に合わせて災害査定立会の件数も急増している。平成27年災(1~12月)に実施された災害査定立会は1万2,482件でそのうち1万2,468件が決定を受け、災害復旧等事業費は1,672億3,300万円だった。ところが平成30年災では、5万767件の災害査定立会が行われうち5万460件が決定、災害復旧等事業費は6,663億1,500万円に上った。災害復旧事業費の査定立会とは財務局(立会官)派遣派遣主務省(災害査定官)災害現場現地で災害復旧事業費の決定予算措置派遣申請地方公共団体(申請者)災害復旧等事業費査定立会結果の推移■決定件数と金額010,00020,00030,00040,00050,00060,0000100,000200,000300,000400,000500,000600,000700,000(百万円)(件)平成30災平成29災平成28災平成27災平成26災平成25災金額決定件数平成30年災では5万767件の災害査定立会を実施財務局は財政を所管する財務省の立場から係官を災害現地に派遣6 ファイナンス 2019 Sep.

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