ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
8/76

流通市場における プレゼンスも高水準国債市場における海外投資家のプレゼンスは着実に高まってきている。海外投資家の国債保有状況については、日本銀行が四半期ごとに公表している「資金循環統計」で確認できる。平成31年3月末の速報値を見ると、国債及び国庫短期証券(T-Bill)の保有者別内訳で海外投資家の割合は12.7%となっている。「T-Bill」は、満期1年以下の「割引短期国債(TB)」と「政府短期証券(FB)」を合計したもので、平成21年2月より統合して発行されている。このT-Billに限ってみれば、海外投資家の保有割合は71.3%に上っている。このように海外投資家による日本国債への投資は、短期債の保有割合が高いことが特徴の一つになっている。また、海外投資家は、流通市場で取引を活発に行う傾向があり、売買シェアは平成31年3月末で現物が39.4%、先物65.2%を占めている。海外投資家の流通市場におけるプレゼンスは、保有割合に比べて大きいことから、動向を注視していく必要がある。海外投資家による日本国債の保有割合を時系列で追ってみると、平成20年9月末時点では8.5%を占めていたが、リーマン・ショックを機に減少に転じ、平成22年3月末には5.6%まで落ち込んだ。その後は各国が金融緩和等を実施したことによるグローバルな投資資金の流入や、平成22年の欧州債務危機を背景とした「質への逃避」といわれる動きから、安全資産とみなされた日本国債を買う海外投資家が見られた。国債及び国庫短期証券(T-Bill)の保有者別内訳一般政府(除く公的年金)33,0320.3%財政融資資金50.0%日本銀行4,859,89843.2%銀行等1,815,85616.1%生損保等2,109,54418.7%公的年金456,9034.1%年金基金311,1672.8%海外1,426,62712.7%家計132,5851.2%その他108,4951.0%合計1,125兆4,112億円(単位:億円)※平成31年3月速報値出所:日本銀行「資金循環統計」国庫短期証券(T-Bill)の保有者別内訳合計97兆4,451億円(単位:億円)一般政府(除く公的年金)180.0%財政融資資金50.0%日本銀行103,62310.6%銀行等155,76216.0%生損保等20,1232.1%公的年金00.0%年金基金00.0%海外694,92071.3%家計00.0%その他00.0%海外投資家のプレゼンスが高まる。短期債の保有割合が高いのが特徴保有者層の多様化の現状Report 24 ファイナンス 2019 Aug.

元のページ  ../index.html#8

このブックを見る