ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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Report 1海外投資家との関係を強化 多額の国債残高を抱える我が国にとって、国債の安定消化は重要な課題になっている。そのためには幅広い投資家層に国債を保有してもらうことが欠かせない。国債管理政策の諸制度の議論を行う「国の債務管理の在り方に関する懇談会」でも、投資家の多様化、なかでも海外投資家による保有は、重要なテーマのひとつとなっている。そこで、財務省では平成26年に国債政策情報室を設置し、海外投資家へのIR活動に一層、力を入れている。海外IRは、国債保有者層の多様化を通じて、国債市場の安定を図るとともに、投資家のニーズに即した情報を正確かつタイムリーに提供することで、長期安定的な国債保有を促すことなどを目的として行われている。これらを実現するための実施方針として、国債管理政策に加えて、広く日本の経済政策や財政健全化の取組み等に関しても情報発信を強化することが掲げられている。また、海外中央銀行(外貨準備)、年金基金、生命保険など国債の安定的な保有が見込まれる投資家を重視すること、欧米に加えて、アジア地域・新興国向けのIRを一層強化することも重要である。さらに、個別投資家との面談を通じて、投資家のニーズを踏まえた的確な情報提供・情報収集をするとともに、セミナー方式や日本国債ニュースレターの送信等の方法を適宜組みあわせ、費用対効果の高い海外IRを実施すること、海外投資家等から得られた情報について、関係部局で幅広く共有すること、各国の債務管理当局や国際機関、海外中央銀行との関係を強化することも重視している。この実施方針に基づき財務省では、銀行や生命保険会社等の国内機関投資家や個人投資家のみならず、海外投資家の国債保有促進に向けた取組みを進めている。国債保有者層の多様化を通じ、国債市場の安定を図る海外IRの目的及び方針海外IRの目的1国債保有者層の多様化→ 国債の確実かつ円滑な発行、 国債市場の安定2国債及び日本経済に関する正確かつ タイムリーな情報提供→ 長期安定保有の促進3海外投資家の動向及びニーズの的確な把握→ 国債管理政策へのフィードバック海外IRの実施方針● 国債管理政策に加えて、広く日本の経済政策や財政健全化の取組み等に関しても情報発信を強化。● 海外中央銀行(外貨準備)、年金基金、生命保険など国債の安定的な保有が見込まれる投資家を重視。● 欧米に加えて、アジア地域・新興国向けのIRを一層強化。● 個別投資家との面談を通じて、投資家のニーズを踏まえた的確な情報提供・情報収集。セミナー方式やニュースレターの送信等の方法を適宜組みあわせ、費用対効果の高い海外IRを実施。● 海外投資家等から得られた情報について、関係部局で幅広く共有。● 各国の国債管理当局や国際機関、海外中央銀行との関係強化。海外IRの目的とはReport 1 ファイナンス 2019 Aug.3特集保有者層の多様化を通じた国債市場の安定国債の海外IR活動 財務省の取組み

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