ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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なった際、第1号被保険者及び第3号被保険者は基礎年金を受給し、第2号被保険者等は基礎年金に加え厚生年金を受給することとなる。支給開始年齢は、基礎年金が65歳である。厚生年金保険は、2000年の制度改正により60歳から65歳へ移行中であり、男性は2025年度までに、女性は2030年度までに65歳へ引き上げ予定である。年金の財源は、国民が支払う保険料、国庫負担(基礎年金給付に対し2分の1負担)、積立金からなる。積立金に関しては、2004年の制度改正において*7、概ね100年間で財政均衡を図る方式とし、財政均衡期間の終了時に給付費1年分程度の積立金を保有することとして、積立金を活用し後世代の給付に充てることとされた。2004年の制度改正では、財源の範囲内で給付水準を自動調整する仕組みである「マクロ経済スライド」も導入された。年金の財政状況を定期的に確認するため、少なくとも5年ごとに財政検証が実施され、概ね100年という長期の財政収支の見通し、マクロ経済スライドの開始及び終了年度の見通し並びに給付水準の見通しが作成され、財政状況の検証が行われている。2.2 財政方式現在の日本の公的年金制度の財政方式は、賦課方式に近い「修正積立方式」と言えよう。その根拠の一つ*7) 2004年の制度改正の詳細については第3節で触れる。*8) 平成26年(2014年)財政検証結果レポートでは「我が国の公的年金制度は、高齢者に対する年金の支給に要する費用をそのときの現役世代の負担によって賄うという『賦課方式』を基本としつつ、一定の積立金を保有しそれを活用することにより、将来の受給世代について一定水準の年金額を確保するという財政方式のもとで運営されている。」との表現が用いられている。*9) 2060年における合計特殊出生率1.35を中位推計とし、高位推計は1.60、低位推計は1.12に設定。(2010年実績は1.39)は、財政検証結果に求めることができる*8。前述のとおり、日本の公的年金制度では年金の財政状況を確認するため、少なくとも5年ごとに財政検証が実施されている。財政検証では、将来推計人口(少子高齢化の状況)の前提、労働力率の前提、短期及び長期の経済前提が設定され、標準的な年金の所得代替率の見通し等が示されている。直近に行われた平成26年(2014年)財政検証では、長期の経済前提は幅の広い8ケース(ケースA~H)が設定されている(表5)。マクロ経済スライドによる給付水準調整は、概ね100年間の年金財政が均衡するところで終了する仕組みであるが、終了時期及び終了後の所得代替率は、今後の人口や経済の推移で変わる。図2は、人口が中位推計*9で推移した場合の、幅広く設定した経済前提に応じたマクロ経済スライドの終了年度及び終了後の所得代替率の変化を示したものである。このうちケースHでは、機械的に給付水準調整を続けるとある時点をもって積立金が無くなり、財政方式が完全な賦課方式に移行することが示されている。また、日本の公的年金制度は、将来人口及び経済環境、特に金利の影響を受ける。つまり、将来人口の影響を受ける賦課方式と、金利の影響を受ける積立方式の両方式の側面をあわせ持つ制度と言える。この点図1 日本の公的年金制度の概要(注)数値は2016年3月末時点。年金制度には確定拠出年金等の3階部分も存在するが、本稿では割愛。(出所)平成29年(2017年)版厚生労働白書を参考に作成。国民年金(基礎年金)厚生年金保険(民間サラリーマン)加入者数3,686万人(公務員等)加入者数443万人1階部分2階部分〔自営業者など〕〔 会 社 員 〕〔公務員など〕第2号被保険者の被扶養配偶者1,668万人4,129万人915万人第1号被保険者第2号被保険者等第3号被保険者6,712万人58 ファイナンス 2019 Aug.連載日本経済を 考える

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