ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
55/76

続く2019年3月のFOMCにおいて、(1)同年5月より保有国債の毎月の縮小ペースを鈍化させること、(2)同年9月末でバランスシート縮小を終了することを表明し*7、2017年から続けてきたバランスシートの縮小は、当初試算されていたよりも早く終了させることが決定された。直近では、2019年7月のFOMCにおいて、縮小終了の時期を更に2カ月前倒しすること(8月から)が決定された。また、縮小終了後(2019年10月以降)のバランスシート規模について、(1)当面の間は一定水準を維持すること*8、(2)銀行券等の負債の増加に伴って再び増加すること*9、が2019年3月のFOMCにおいて公表されているが、そのタイミングは、現時点で明らかにされていない。(注)文中、意見に係る部分は全て筆者の私見である。【図2】QEの概要QE1QE2QE3長期証券買入れ長期証券買入れ長期証券買入れエージェンシー保証 MBS等国債国債エージェンシー保証 MBS長期国債の買取り発表日08年11月25日09年3月18日10年11月3日12年9月13日12年12月12日期間08年12月~10年3月09年3月~10月10年11月~11年6月2012.9~2014.10※「労働市場の見通しが著しく改善するまで」継続するとして実施2013.1~2014.10※「労働市場の見通しが著しく改善するまで」継続するとして実施買入額上限合計14,250億ドル3,000億ドル6,000億ドル設定せず設定せず月平均--約750億ドル・2013年12月まではエージェンシーMBSは毎月400億ドル、国債は毎月450億ドル買入れ(計850億ドル/月)・2014年1月以降、FOMC開催毎に買入れ額を縮小(毎回計100億ドル縮小)、2014年10月末をもって終了買入対象 となる資産エージェンシー証MBS、エージェンシー債2-10年国債が中心残存期間が 1年超-30年の国債エージェンシー保証MBS残存期間が4-30年の国債(出所)FRB【図1】出口戦略を巡る流れ資産買入れ縮小開始の表明2013年12月資産買入れ縮小開始2014年1月資産買入れの終了2014年10月政策金利の引上げ開始2015年12月追加利上げバランスシートの縮小開始2017年10月~保有国債の毎月の縮小ペースを鈍化2019年5月~バランスシート縮小の停止2019年8月利上げの様子見姿勢2019年6月政策金利の引下げ2019年7月出口戦略の原則(2011年6月)政策正常化の原則と計画政策正常化の原則と計画(2014年9月)政策正常化の原則と計画の補記政策正常化の原則と計画の補記(2017年6月)政策正常化の開始【図3】Fedの資産(項目別)05,00010,00015,00020,00025,00030,00035,00040,00045,00050,0000607080910111213141516171819(億ドル)(出所)FRB(QE1)(QE2)(QE3)短期国債長期国債MBSその他エージェンシー債17年10月~B/S縮小開始【図4】バランスシート縮小計画のイメージ※償還を迎える保有証券の額は月毎に異なるため、実際の資産減少額は、各月の減少上限額を下回る場合もある。バランスシート残高▲100▲100▲100▲500▲500▲500▲500▲400▲400▲400▲300▲300▲300▲200▲200▲200tt+1t+2t+3t+4t+5t+6t+7t+8t+9t+10t+11t+12t+13t+14t+15…最大額(計500億ドル/月)に到達。以降は、最大額を維持。開始時は計100億ドル/月※t=バランスシートの縮小開始月3ヶ月3ヶ月2年目以降は、年間で最大6,000億ドルの減少縮小開始から12ヵ月で最大3,000億ドル減少計100億ドル/月増額計100億ドル/月増額計100億ドル/月増額(4.5兆ドル)3ヶ月3ヶ月(出所)FRB*7) https://www.federalreserve.gov/newsevents/pressreleases/monetary20190320c.htm*8) 銀行券等の超過準備以外の負債は増加を続けるため、バランスシート規模が一定であれば、超過準備額は徐々に減少することなる。*9) 超過準備が十分に減少した段階で、再びバランスシートを拡大させ始める、という意。 ファイナンス 2019 Aug.51コラム 海外経済の潮流 123連載海外経済の 潮流

元のページ  ../index.html#55

このブックを見る