ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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自動車の保有意識の変化・次に、全体の保有台数の増加幅が縮小傾向である要因を探る。・地域別にみれば大都市圏に住む人々の保有率が低いこと、年齢別にみれば若者の保有率が低いことが一部影響していると考えられるだろう。(図表7)・また、近年のレンタカーやカーシェア市場の伸びも、移動の利便性や柔軟性を高めており自動車保有の伸びの縮小要因であることが伺える(図表8)。・ただし、直近の約20年では、運転免許人口は緩やかに増加してきた(図表9)。運転免許人口が依然として高水準にあることやレンタカーとカーシェアの市場が拡大していることを踏まえれば、一定程度は自動車の利用意欲があると考えられるが、一部の層では自動車を保有するという意識が薄くなってきていると推察される。図表7 地域別・年齢別の保有率020406010080首都圏地域別64.683.747.964.079.4年齢別地方29歳以下30~59歳60歳以上(2017年、%)図表8 レンタカーとカーシェアの推移8010013011502,0001,00020112012201320142015201620172018(2010年=100)(千人)自動車レンタル業(個人向け)売上高カーシェア会員数(右軸)図表9 運転免許人口の推移6065707585801993199519971999200120032005200720092011201320152017(百万人)自動車の利用意識とカーシェア・首都圏や若者層等の一部において、自動車の保有から利用へ意識が変化していることが確認できた。カーシェアで利用されている車両台数は、2018年では約2万9,000台と全体の保有台数の約6,000万台と比較して少ない。カーシェア市場は拡大を続けているが、まだ大きな市場ではないだろう(図表10)。・アンケート調査によると、カーシェアの入会理由は「ステーションが自宅の近くにある」という理由が最も多く、市場拡大のためにはインフラの整備が重要であると考えられる(図表11)。・カーシェアの利用用途が買い物から旅行まで多岐に渡っていることからも、活用の場は多いと考えられ、ターゲットを絞り込みインフラを整備すれば、引き続き成長の余地はあると推察される(図表12)。図表10 カーシェア市場(注1)市場規模は、タイムズ24㈱のカーシェア売上×全体のカーシェア台数/タイムズ24㈱のカーシェア台数で筆者推計。(注2)2011年、2012年はデータ不十分のため、市場規模の推計はしていない。0020401,000500201120122013201420152016201720182019(億円)(千台、千ヶ所)市場規模車両台数(右軸)ステーション数(右軸)図表11 カーシェアの入会理由(上位5つ)月会費の価格短時間の利用料金近くに複数のステーションがあるステーションが自宅の近くにある乗りたい車がある50403020100(2017年、単数回答、%)図表12 カーシェアの利用用途(上位5つ)アクセスの悪い場所への移動荷物の運搬送迎買物ドライブ806040200(2017年、複数回答、%)(出典)内閣府「消費状況調査」(一社)日本自動車工業会「乗用車市場動向調査」、国土交通省「国土交通白書」「国民意識調査」、警視庁「運転免許統計」、経済産業省「第3次産業活動指数」、タイムス24(株)「カーシェアリングに関するアンケート」、カレコ・カーシェアリングクラブ「会員アンケート2017」、(公社)交通エコロジー・モビリティ財団「全国のカーシェアリング事例一覧」 (注)文中、意見に関る部分は全て筆者の私見である。 ファイナンス 2019 Aug.49コラム 経済トレンド 62連載経済 トレンド

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