ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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コラム 経済トレンド62大臣官房総合政策課 杉山 渉/石神 哲人自動車の保有と利用本稿では、近年取り巻く環境が大きく変化している自動車市場の動向を考察していく。自動車業界の現状・国民生活を大きく変化させてきた耐久消費財3Cの普及率をみると、ルームエアコンとカラーテレビが現在も高水準を維持している一方で、自動車だけが2003年以降減少基調になっていることが分かる(図表1)。・普及率を世帯数と保有台数に分解して減少要因を考えると、世帯数は単身世帯の増加や核家族化の進行により堅調に増加してきた。逆に乗用車の保有台数は2003年頃より増加幅が緩やかとなり、世帯数の増加ほど自動車の保有台数は増加していないものと考えられる。(乗用車複数保有率:2003年、38.5%/2017年、35.9%)(図表2、3)。・以降、本稿では、近年変化している自動車に対する消費者の動向について考察していくこととする。図表1 3Cの普及率50607080100901988199319982003200820132018(%)(注)普及率=保有世帯数/調査世帯×100ルームエアコンカラーテレビ自動車図表2 世帯の状況0153060234451989199319982003200820132017(千世帯)(人)二人以上世帯単身世帯数世帯人員数(右軸)図表3 乗用車の保有台数の推移0204080601988199319982003200820132018(百万台)(注)1988年、1993年は種類別が公表されていないため全体の台数としている。乗用車軽自動車自動車の保有背景の分析・近年、主運転手の性別や年齢は大きく変化しており、女性比率、高齢者比率ともに増加している。また、自動車の使用目的に占める買い物の割合が高まっていること、走行距離が短くなっていることも分かるが、自宅周辺で買い物をする際に自動車を使用する女性や高齢者が近年増加しているからだと考えられる(図表4、5)。・結果、こうした走行距離の短縮化は乗用車の摩耗や故障リスクの減少につながり、乗用車の品質向上等も相まって、乗用車の買替サイクルの長期化が進んでいると考えられる(図表6)。図表4 主運転手の性別と年齢105030355545199519971999200120032005200720092011201320152017(%)(歳)女性比率平均年齢(右軸)図表5 自動車の使用目的199519971999200120032005200720092011201320152017020406010080(%)仕事・商用レジャー通勤・通学買い物・用足し図表6 走行距離・保有期間2003005004005687200120032005200720092011201320152017(km)(年)平均月間走行距離平均新車保有期間(右軸)48 ファイナンス 2019 Aug.連載経済 トレンド

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