ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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巻頭言これからのコミュニティ ~場を編集する~good mornings株式会社 代表取締役水代 優働き方改革、副業、サードプレイス、人生100年時代。このような言葉が踊る昨今、コミュニティへの参加やコミュニティづくりに注目が集まっています。弊社はコミュニティづくりを目的とした場づくり、まちづくりのお手伝いをしています。場づくりといっても、ただ意匠的に優れている場所をつくるのではなく、我々は「場づくり」を“編集すること”と捉え、例えるなら雑誌などのメディアをつくることに近い感覚で行なっています。メディアをつくる編集者は、コンテンツの企画から制作までを行いますが、我々も場づくりを同様に捉えています。カフェやコミュニティスペースなど人が集うリアルな場をつくり、多様なイベントの開催やその場の魅力を伝えるフリーペーパーの制作やウェブサイト・SNSの運営も行います。事業が多岐にわたるというより、目的を達成するために多様なアプローチを活用しているといった感じです。同じ街で働いている人と住んでいる人、新住民と旧住民、社会人と学生、生産者と消費者、都心の人と地方の人など、日常的には交わりづらい人と人を繋ぎコミュニティ化したい。そのためにはどのようなコンテンツが必要なのかを考え編集を進めてゆきます。日本橋浜町に所在する弊社本社を兼ねた複合施設Hama Houseの1階は、弊社が運営する「まちのリビング」というコンセプトのカフェです。1年を通して、様々なコンテンツを用意し、住民やオフィスワーカー、地元企業が新しい関係性を築き、まちに愛着が湧く機会を創出しています。具体的には、エリアの企業とコラボレーションした企画を実施し地域の方々に楽しんで頂いたり、毎月最終水曜日には住民やワーカーにお互いのことを知ってもらう交流の機会を設けています。そのような取組みを地道に続ける事で、住民ではないワーカーが町内活動に参加したり、地元企業が連携して商品開発を行うという垣根を超えたコラボレーションが少しずつ始まりました。この活動が評価され、HamaHouseはグッドデザイン賞を受賞しました。デザインの概念が大きく変わっているうねりを感じます。我々が取り組む「コミュニティづくり」という活動は、ある空間に来てくださった人同士の交流を深めることに加え、最近は新たな観点でのコミュニティづくりも推進しています。日本橋浜町では、季節に1度マルシェを開催しており、地元の商店街や全国各地の生産者たちの出店で賑わいます。このような機会は必ず売れ残りが発生するためTokyo Good Manners Projectという一般社団法人と共に、まちを挙げてフードロス問題に取り組み始めました。残った食材を有効活用しようと、我々が地元企業に出張販売をしに行ったり、エリアのホテルやレストランと共に各飲食店舗でロスフードを用いたメニュー開発および提供を行い、地域の皆様にフードロス問題を一斉に喚起しています。地域の事業者同士がライバルではなく、仲間として取組むコミュニティ化を推進しています。このようにコミュニティづくりの概念を柔軟に拡げ、多様な軸で推進してゆく事で、令和の時代は人やまちがより活気づいてゆくと信じています。場づくりに取り組む際、大切にしていることは「自身がそのコンテンツにワクワクしているか」です。自分自身がそのコンテンツのファンでありコミュニティの一人であること。その事こそが、血の通った場の創出、まちづくりの基礎だと考え、日々ワクワクしながら編集者の目線でコンテンツを考え、また現場での交流を楽しんでいます。ファイナンス 2019 Aug.1財務省広報誌「ファイナンス」は、こちらからご覧いただけます。

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