ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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財務総合政策研究所Ministry of Finance, Policy Research Institute1.はじめに成毛でございます。よろしくお願いします。私が日本マイクロソフトを辞めたのは20年前で、この20年の間に本を40冊以上書きました。主に書評が中心ですが、歌舞伎入門や巨大建設物など様々なジャンルの本を書いています。最近書いたものが「Amazon 世界最先端の戦略がわかる」です。12万部ほど売れまして、その内容を聞かせてほしいという声もいただき、いろいろなところで講演させていただいています。本日はこの本に沿って、できるだけアップデートした情報も入れながらお話を進めてまいります。2.Amazonの時価総額Amazonの従業員数は今年1月末現在、全世界で64万7,500人ということです。売上高が25兆円にもかかわらず、対前年の成長率が30%ということですから、これがどこまで大きくなっていくのかが肝であり、まだまだAmazonの株価は上がっていくというのがマーケットの一般的な見方です。Amazonのオーナーは、皆さんご存知のとおり、ジェフ・べゾス氏です。最近離婚して、持ち株比率が14%から12%に減少したそうです。それでも先週末(5月24日)現在でAmazonの株価は1,823ドル、時価総額は8,977億ドル、円換算で97兆8千億円ということになりますので、Amazon株式を14%持っているということは14兆円近く持っていることになります。企業の時価総額について、先週末のデータで見てみますと、世界最大はMicrosoftで105.4兆円ですが、いわゆるGAFAと言われているAmazonは97.8兆円、その次がAppleで89.8兆円、Googleが86.0兆円、Facebookが56.3兆円という順です。我が国最大のトヨタは21.2兆円であり、ざっくり言ってAmazonの約5分の1の時価総額ということになります。皆さんも日本人として忸怩たるものがあるかもしれません。なお、今後、Amazonの株価は2倍になるだろうと言われていますので、時価総額200兆円という大台が見えてきますと、各国とも、当局はいろいろと考えるべき時期が来るのではないかなと思います。3. 高度成長期の日本企業と同じ行動様式Amazonの時価総額は大きいのですが、実際のところ儲かってはいません。ご存知のとおり、Amazonは無配企業です。無配企業というと、高度成長期の日本企業を思い出すわけですが、Amazonはこれと同じ行動様式です。これは本日の話のポイントになります。つまり、配当などしない、すべて貯め込む、貯め込むだけでなくシェアを拡大するために大量に投資していく。したがって、儲からない。儲からないようにしておきながら、投資キャッシュフローを徹底的に大きくしていくのです。4.キャッシュフローを稼ぐ経営Amazonのキャッシュフローを時系列でみると、投資キャッシュフローはずっとマイナスです。そのマイナスがどんどん大きくなっていっており、2017年に令和元年5月27日(月)開催職員 トップセミナー成毛 眞 氏(書評サイトHONZ代表/元日本マイクロソフト社長)「Amazon 世界最先端の戦略」演題講師 ファイナンス 2019 Aug.41連載セミナー

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