ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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どが加速していくだろう。人口減少という制約の下で、中長期的な成長を実現するためには、新たな技術を効果的に用いることによって、一人当たり、時間当たりで生み出す財やサービスの量と質を引き上げていくとともに、それを可能とするために、一人ひとりが価値を生み出す能力を高めていくための努力が必要になるだろう。日本の労働生産性を他の先進国と年平均伸び率で比較すると、平成13年(2001年)から平成19年(2007年)の間は高くない状況であったが、近年では改善してきており平成23年(2011年)から平成29年(2017年)の間では、主要先進国の中でも遜色のない伸び率となっている。この上昇傾向を維持していくことが、経済成長の維持・拡大には不可欠であると考えている(図14)。世界に目を向けると、保護主義的な動きの台頭、地政学的リスク、自然災害の増加、金融環境の大きな変化など様々なリスクが存在している。こうしたリスクがいかに顕在化しないようにするか、また、これらが顕在化した場合においても、どのようにして日本経済への影響を小さくすることができるかも、大きな課題である。国内においても、高齢化の進展に伴う社会保障費用の増加や家計貯蓄率の減少(図15)など構造的な課題があり、全世代型社会保障への改革を着実に進め、将来世代を含めた国民が安心して暮らすことの出来る社会を形成していく不断の努力を続けていく必要がある。社会的格差を表すジニ係数は、現役世代と比べて収入の少ない高齢世代が増えることとなるため上昇する傾向にあるが、所得再分配後のジニ係数をみ(図13)実質GDPの推移90110130150170190210平成元357911131517192123252729実質の推移フランスドイツ日本イギリスアメリカ90100110120130140150160平成元357911131517192123252729一人当たり実質の推移フランスドイツ日本イギリスアメリカ(平成元年=100)90100110120130140150160170平成元357911131517192123252729生産年齢人口1人当たり実質の推移フランス日本イギリスアメリカ(平成元年=100)(注)自国通貨ベース(出所)IMF「World Economic Outlook」、OECD.stat(平成元年=100)(年)(年)(年)(注)自国通貨ベース(出所)IMF「World Economic Outlook」、OECD.stat(図14)労働生産性の各国比較時間当たり実質労働生産性の年平均伸び率(2001-07年)時間当たり実質労働生産性の年平均伸び率(2011-17年)イタリア英国米国フランスドイツカナダ日本0.18%0.31%0.52%0.80%0.89%0.96%0.96%0.00%0.20%0.40%0.60%0.80%1.00%1.20%イタリアカナダフランスドイツ日本英国米国-0.01%0.99%1.24%1.33%1.36%2.04%2.11%-0.10%0.40%0.90%1.40%1.90%2.40%(出所)OECD.Stat36 ファイナンス 2019 Aug.SPOT

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