ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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先月号では、平成30年間の我が国のマクロ経済構造の変化を振り返った上で、ワークライフバランスを軸に家族と社会のあり方の変化をみてきた。後半の今月号では、より個人の生活に密着したテーマを2つ、消費構造の変化と健康志向の高まりについて採り上げることとしたい。なお、文中意見にわたる部分は筆者の個人的な見解であり、著者の属する組織の見解ではない。1消費構造の変化 モノからコトへ平成時代の変化として情報技術の高度化を外すことは出来ない。インターネットが日本で商用利用開始された平成5年(1993年)以降、個人の日常生活や企業・公的機関の活動におけるICT利用が急速に拡大してきた。個人レベルの生活スタイルまでも大きく変えたのは、間違いなく携帯端末の爆発的な普及である。技術革新によりメモリの性能が向上したことに加え、大量生産も可能となったこと、また移動通信機器の通信速度が平成の30年間で約10,000倍と飛躍的に上昇したことで写真や動画など様々なデータを共有することが出来るようになり利便性が高まったことなどが主な要因として挙げられる。平成初期は一部の人が所有していたに過ぎないポケベルが、PHS、携帯電話、スマートフォンと進化し、モバイル端末の世帯保有率は今や100%に近い。メールやSNSを通じてコミュニケーションをとるだけでなく、世界中のニュースから世間で話題のネタまでがタイムリーに手元に届く、そして、音楽・映画鑑賞、読書、オンラインゲーム、買い物、病院の予約、家電の遠隔操作など日常生活の大半を、掌の小さな端末で出来るようになった。2人以上世帯の消費水準指数の推移をみると「交通・通信」への支出が大幅に増加しており、モノ消費の代表例である「被服及び履物」への支出は減少している(図1)。また、業態別売上高をみると、足もとでのEコマースの急成長は著しく、スーパーやコンビニを上回っている(図2)。ゲーム市場では、オンラインゲームが広がり、リアルタイムで不特定多数の人と交流することも出来るようになった(図3)。いつでも容易に「モノ」が手に入るようになったことで、消費者がモノの所有に価値を見出さなくなり、代わりに特別な経験が得られる「コト」を重視するようになったと指摘されている。典型的であるのは音楽平成を振り返る[後編]大臣官房総合政策課 前企画室長 原田 浩気/係長 道上 友里香(図1)2人以上世帯の消費水準指数020406080100120140160180200平成元712172227(世帯人員及び世帯主の年齢分布調整済、平成元年=100)総合(除く住居等)交通・通信保険医療被服及び履物(年)(出所)総務省「家計調査」(出所)総務省「家計調査」(図2)業態別売上高百貨店スーパーコンビニエンスストアドラッグストアEコマース02468101214161820平成元712172227(年)(兆円)(出所)経済産業省「商業動態統計」、「平成30年度電子商取引に関する市場調査」(出所)経済産業省「商業動態統計」、「平成30年度電子商取引に関する市場調査」32 ファイナンス 2019 Aug.SPOT

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