ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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も少なからず見て取れる。当然、都市を分断した「中央監視」に関連して刻まれた記憶と感情は消えておらず、匿名性の価値が、インターネットの時代に改めて想起されたとしても不思議ではないであろう*16。ドイツは連邦国家であり、「強い分権性」が、通用力の高い現金を支持させているとの指摘もある。交通系電子マネーも導入されているものの、相互利用ができないため、使いにくさが残るという。他方、我が国でも、発行体が異なる交通系電子マネー(ICカード)が全国的に相互利用サービスを拡大し、利便性を向上*16) 武邑(2018)参照。なお、Amazonが第2本社設立を表明したことを受けて、2018年には様々な自治体が過熱気味ともいえる誘致運動を展開した(Financial Times, Thu 8 Nov 2018, Jhon Gapper “The charade of Amazon’s beauty parade”等)が、その候補地が絞られようとしていた時期に、Google は地元の反対を受けてベルリンでのキャンパス設置断念を表明している(Financial Times, Fri 2 Nov 2018, Frederick Studemann “Google loses a battle to Berlin’s cool kids”)。させるまでには相応の年月を要しており、現在でも相互利用可能な範囲にも種々の制約が残っていることに鑑みれば、ドイツにおいても、今後、状況が変わる可能性も排除はできないと思われる。(3)課題等中央銀行は、支払手段は基本的に利用者が選択するものとしつつ、実態把握のため、3年毎の支払行動調査を継続している(次回2020年)。図表6 金額別の支払手段968860392425931454634257934831391922347100%10%20%30%40%50%60%70%80%90%100%5ユーロ未満5~20ユーロ20~50ユーロ50~100ユーロ100~500ユーロ500ユーロ以上現金デビットカードクレジットカード電子支払スキーム口座振替その他のキャッシュレス決済(注)500ユーロ紙幣は2018年末で発行停止。(出所)Deutsche Bundesbank “Payment behaviour in Germany in 2017” より作成。図表7 店頭での現金支払い割合に関する調査結果(1)取引回数別(%)(2)取引金額別(%)1マルタ921ギリシャ752ギリシャ882マルタ742キプロス883キプロス724スペイン874スペイン685イタリア864イタリア686オーストリア856スロベニア687ポルトガル817オーストリア678スロベニア808スロバキア668ドイツ809リトアニア6210アイルランド7910ドイツ5511スロバキア7811ラトビア5412リトアニア7512ポルトガル5213ラトビア7113アイルランド4914フランス6814フィンランド3315ルクセンブルク6415ベルギー3216ベルギー6316エストニア3117フィンランド5417ルクセンブルク3018エストニア4818フランス2819オランダ4519オランダ27(出所)ECB “The use of cash by households in the euro area” より作成。28 ファイナンス 2019 Aug.SPOT

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