ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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改修予算配分の優先付けの結果、改修予算配分の優先度が低いと判断された宿舎については、入居状況による宿舎の効率的な使用の観点や、維持管理費と借受移行のコスト比較による経済性の観点から、予算投下の合理性を判断する。合理的でないと判断された宿舎については、既存宿舎への集約化や借受移行を実施する。このうち、集約化できない宿舎は、宿舎の維持管理費用と民間借受費用のコスト比較を実施し、民間借受費用が下回る場合には、借受に移行する。・ 大規模改修の手法大規模改修の手法については、その後の維持管理が長期にわたることも踏まえつつ、PFIなど民間の知見・活力を活用し、可能な限り費用を軽減できる手法を取り入れることができないか検討を行う。・ 陳腐化への対応老朽化した宿舎を中心として、浴槽やトイレ、台所といった水回り部分などにおいて設備の陳腐化が進んでいる。このため、必要な場合には、大規模改修工事の際に、現在の一般的な住居の仕様と比べ著しく仕様が劣る設備の陳腐化の解消を図る。5おわりに上記のとおり、今般の国有財産分科会の答申は、これまでの社会経済情勢の変化や国有財産の状況の変化を踏まえ、国有財産の「最適利用」をキーワードにとりまとめられたものである。今後を見通した場合、所有者不明の土地に関して所有権の放棄などの検討が進み、国有財産として管理する不動産が増加する可能性があるほか、デジタル領域の技術革新や我が国における働き方についての変革の動きもみられるところであり、行政の進め方や働き方も大きな影響を受けることも十分想定されるなど、国有財産を巡る状況が、さらに変化していくことも考えられる。こうした新たな状況変化や時代の要請に対応していくためには、この答申を出発点として、国有財産の「最適利用」に向けた不断の取組みを進めていくことが重要である。本稿が、こうした変化のただ中にいる国有財産行政の現在位置についての理解を深めるための一助となれば幸いである。 ファイナンス 2019 Aug.21今後の国有財産行政の方向性SPOT

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