ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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また、行政財産は各省各庁においてそれぞれ管理されていることから、地域において国有財産の総合調整を担う財務局が、各省各庁における有効活用を促すとともに、各省各庁が所管する庁舎・宿舎の情報を一元的に発信する。○使用許可期間の設定行政財産の使用許可期間については、現状、原則1年以内、必要に応じて、最長5年まで1年毎に更新できるとの取扱いが基本となっている。他方で、政策上の必要性を勘案し、宿舎の居室を家庭的保育事業(保育ママ)等の保育施設として使用許可を行う場合には、許可期間を3年以内としているほか、国立公園、道路、河川などの公共用財産の場合には、当該財産の状況や利用目的等を考慮し、10年以内での設定を可能とするなどの対応を行っている。こうした状況を踏まえ、行政財産の有効活用を促進する観点から、個々の利用内容やニーズ、投資費用の回収に要する期間を考慮し、国の事務・事業に支障のない範囲内で、以下のとおり、使用許可の期間を柔軟に設定できるようにしていく。・ 現状、使用許可期間は、原則1年以内としつつも、国の事務・事業に支障のない範囲内で最長5年まで更新を可能としていることを踏まえ、一般的な取扱いとして、5年以内での使用許可期間の設定を可能とする。また、更新については、特定の者に対して便益が偏らないよう、最初の使用許可期間と併せて最長10年まで、1回に限り使用許可期間の更新を可能とする。・ 5年を超えて使用許可を行う必要がある場合には、当該行政財産の使用状況や個々の利用目的及び投資費用の回収に要する期間などを審査した上で、国有財産法に定める期間(土地は30年以内、建物は10年以内)を限度として、中長期的な使用許可期間の設定を可能とする。また、既に一定の使用許可期間が定められている場合であっても、当該行政財産を引き続き使用許可することが、国の事務・事業に支障を及ぼさない場合には、国有財産法の定める期間を限度として、使用許可期間の更新を可能とする。イ.庁舎需要等への対応○老朽化・耐震性能不足への取組み国の庁舎については、老朽化等が進む中で、官庁施設の耐震基準を満たすように順次耐震化を行っているものの、所要の耐震性能を満たしていない官庁施設が1割程度残っている。庁舎整備等にかかる予算が限られる中で、こうした耐震性能のミスマッチを解消していくためには、余剰スペースが生じていないケースであっても、庁舎の使用実態や経済合理性等の観点を踏まえて入替調整が適当と認められるときには、当該官署に必要な耐震性能が確保されるように官署間の入替調整を進めることとする(資料3)。なお、その際には、経済合理性の観点から、入替調整をする場合と耐震改修をする場合のコスト比較を行うとともに、既存庁舎の効率的な使用の観点や新たに使用される庁舎が遠隔地とならないかなど納税者たる国民に対する行政サービスへの影響等の観点も踏まえて、検討を行う。○庁舎需要への対応(i)地方都市における既存庁舎の徹底した活用国の庁舎については、主に地方において、組織の改編や統廃合、定員削減等に伴い余剰スペースが生じている場合がある。これまでも、監査及び入替調整を実施し、非効率使用の改善のための有効活用や余剰のある庁舎への移転による用途廃止等を行ってきており、引き続き、的確に入替調整を行っていくことが必要である。他方で、人口減少や高齢化が進展する地方都市においては、コンパクト・シティ構想等による新たなまちづくりが進められたり、公共施設の統合・廃止に関する方針が定められたりする動きがみられる。こうした状況を踏まえ、国や地方公共団体が管理する施設の余剰スペースについて、双方の施設の最適利用を求める観点からも、最適利用に関する検討の場である協議会等の場で、情報共有を図り、地方公共団体の施設について国の庁舎への入居を促すなど、既存庁舎の徹底した活用を進めていく。なお、入替調整等にあたっては、利用者の利便性や職員の執務環境等への配慮にも留意する。 ファイナンス 2019 Aug.17今後の国有財産行政の方向性SPOT

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