ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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としては、将来においてより多くの行政需要が生じる可能性があるかとの観点から、人口の多い地域に所在し、一度手放すとその再取得が困難となるような土地が考えられる。【留保財産の選定の考え方】○ 首都圏・近畿圏をはじめとした各地方の経済・行政の中心となる地域に所在する一定規模(1,000m2~2,000m2)以上の国有地を目安とする。・ 東京23区等の人口集中地区において1,000m2以上・ 政令指定都市等の各地方の経済・行政の中心となる地域における人口集中地区において2,000m2以上○ 上記以外の地域も含め、それぞれの地域や個々の土地の実情等の個別的な要因も考慮して、総合的に判断し、国有財産地方審議会で審議の上、決定。○定期借地権による貸付の用途の拡大現状、新規の貸付は、原則として、その用途を介護・保育等に限った上で、随意契約により、定期借地権による貸付の形で行っている。留保財産については、将来世代における行政需要に備えるとの観点から所有権を留保するものであることを踏まえ、現状の新規貸付での対応と同様に、強行法規による法定更新が適用されない定期借地権による貸付により活用を図っていく。その上で、留保財産の貸付の用途については、多様化した地域・社会のニーズに対応して拡大していく必要があるが、留保財産であっても公用・公共用優先の原則を基本とすべきことから、地域のニーズを調査した上で、まずは、随意契約の対象となる公的施設の整備、その次に公的施設と随意契約の対象でない施設との複合施設の整備を優先的に対象とする。この場合、公的施設と随意契約の対象ではない施設との複合施設の整備は、随意契約では行えないため、競争入札方式を活用した定期借地権による貸付も可能とする。また、複合施設も含め、地域の利活用の意見が民間施設の利用のみであった場合や、地域では利活用の意見がなかった場合も考えられるが、こうした場合には、将来の公的なニーズへの対応のため、貸付期間が比較的短い事業用定期借地契約(10年以上30年以内)に限り、貸付を行えるようにする。○留保財産の管理処分のプロセス未利用国有地の管理処分手続きについては、公用・公共用優先の原則に基づき、3ヵ月間の公的取得要望を行い、地方公共団体などから公的な要望がある場合には、随意契約により処分を行うこととし、公的な要望がない場合には、一般競争入札により処分を行うこととしている。しかしながら、留保財産については、国が所有権を留保しつつ、最適利用を図っていくことが重要であり、これまで以上に広く地域のニーズを掘り起こす必要がある。また、複合施設などの高度な利用を検討するにあたっては、従来の公的取得要望の受付期間(3ヵ月)では、検討の時間が足りない可能性があり、十分な検討の時間を確保する必要があると考えられる。このため、留保財産の管理処分の方針を検討するにあたっては、地域・社会での利用のタイミングを考慮しつつ、期間を十分にとって、民間へのヒアリングなどを通じて多様なニーズの事前調査を行うとともに、必要に応じて協議会を設け、地方公共団体と活用方針について議論を行い、官民の幅広い知見を活かしていく。その上で、公用・公共用優先の考え方や地域の公的なニーズを踏まえ、国有財産地方審議会で審議し、国として主体的に利用方針を策定する。留保財産の管理処分を進めるにあたり、複合施設の整備などで必要な場合には、二段階一般競争入札の手法を取り入れていく。具体的には、利用方針の策定後、以下のとおり管理処分を行うことが考えられる(資料2)。(i)利用方針に基づき公共随契の対象施設のみを整備する場合は、随意契約での定期借地権による貸付を実施する。(ii)利用方針に基づき公共随契の対象施設とそれ以外の施設を含む整備を行う場合は、必要な条件設定を行って二段階一般競争入札での定期借地権による貸付を実施する。 ファイナンス 2019 Aug.13今後の国有財産行政の方向性SPOT

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