ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
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(冒頭)本年6月14日、財務大臣の諮問機関である財政制度等審議会において、答申「今後の国有財産の管理処分のあり方について-国有財産の最適利用に向けて-」が取りまとめられた。本答申において、平成18年以来、約13年ぶりとなる国有財産行政の新たな方向性が取りまとめられたところである。本稿では、まず、国有財産の制度やこれまでの国有財産行政のあり方について概説した上で、近年の社会経済情勢や国有財産の状況変化を踏まえた今般の国有財産分科会答申の概要を説明することとしたい。1国有財産行政の概要(1)国有財産の範囲・分類国は、不動産(土地、建物等)、動産(現金、机、船舶、航空機等)、債権など様々な財産を所有しているが、本稿における「国有財産」、すなわち、国有財産行政における「国有財産」とは、国有財産法に定められている財産を指す。例えば、土地や建物などの不動産、船舶、航空機などの一部の動産、株式などの有価証券などが該当するが、現金や物品、債権は該当しない。国有財産は、国の行政目的に直接供用される行政財産と、それ以外の普通財産の2種類に分類される。行政財産には、国の事務、事業等の用に供するための公用財産(庁舎、宿舎等)や、直接公共の用に供するための公共用財産(国営公園、道路、河川等)などがあり、普通財産には、庁舎などの跡地、物納された土地、政府保有株式などがある。(2)国有財産の管理・処分・総括国有財産に関する事務には、大きく分けて、管理・処分・総括の3種類がある。管理とは、取得、維持、保存及び貸付等の運用を行うことをいい、処分とは、売払い、交換、譲与、信託等を行うことをいうが、これら管理・処分の事務については、行政財産と普通財産で取扱いが異なっている。行政財産は、各省庁の長が管理することとされており、例えば、道路や河川などは国土交通大臣が、国家公務員宿舎のうち合同宿舎などは財務大臣が管理を行っている。また、行政財産は、国の行政目的に直接供用される財産であることから、処分することなどはできないとされている。これに対して、普通財産については、原則として、財務大臣が管理及び処分を行うこととされており、行政財産と異なり、処分を行うことができるものである。普通財産のうち、未利用の国有地(平成29年度末で約0.4兆円のストック)については、国として保有する必要のないものは売却し、財政収入の確保に努める一方で、それぞれの地域において、施設用地として活用するなど、政策ツールとしても活用を図っている。国有財産の総括事務とは、国有財産を全体として最も効率的に運用するために、財務大臣が、各省庁の長が行う国有財産の管理及び処分の統一・調整を行うものである。具体的な内容としては、例えば、庁舎の取得について各省庁の長から協議を受け、取得の必要性・緊急性などの面から審査を行うことや、各省庁の庁舎について実地監査をし、空きスペースが認められた場合などには、省庁横断的な入替調整を行い、庁舎の効率的な使用を求めることなどがある。今後の国有財産行政の方向性~平成18年以来となる国有財産行政の新たな方向性について~理財局 前国有財産企画課長 嶋田 俊之10 ファイナンス 2019 Aug.SPOT

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