ファイナンス 2019年8月号 Vol.55 No.5
12/76

Report 4海外IRを通じて把握した 最近の動向日本国債に投資する海外投資家の動向としては、主にインデックス投資によるリスク分散を目的とするもの、ドル円ベーシス・スワップ等を活用した短期債への投資、流動性規制への対応を目的とした保有などが見られる。インデックス投資では、ベンチマーク対比でアンダーウェイトとする先が多い。なお、世界経済の不確実性を背景として債券投資を増加させるなか、長期ゾーンを中心に日本国債を購入する先も一部に見られる。通貨スワップを活用した短期債投資に関しては、ユーロ円ベーシス・スワップを活用して短期債投資を行う先も見られる。一方で面談などを通じ多く質問が寄せられた海外投資家の関心事項をまとめると以下のようになる。債務管理政策関連●国債発行計画の具体的内容、策定の背景●中長期的な国債管理政策方針・考え方日本国債市場関連●現下の金融政策のもとでの流通市場の状況●流動性に対する質問や流動性向上への要望●日本国内の投資家の内外投資動向日本経済・財政関連●財政健全化の進捗や今後の見通し●消費増税の影響・対策●外国人労働者の受け入れや女性の社会進出等の労働市場の変化や労働政策●日本国債の格付け見通し引き続き、海外投資家との長期的で緊密な関係構築や、債務管理当局や国際機関との連携強化に取り組んでいくこととしている。今後の方向性■海外投資家との関係構築● 外貨準備当局や年金基金などの海外機関投資家は、昨今の低金利環境下では日本国債への投資姿勢は積極的ではないものの、継続的な投資や長期安定保有が見込めることから、引き続きこれらの投資家を重視したIRを推進し、長期的かつ緊密な関係を構築● 同時に、将来的な保有や市場の活性化に向けて、現在の保有状況に関わらず、大手運用会社等へも定期的な接触を図る● 各投資家の運用体制や投資方針を理解し、個別ニーズや関心に即した説明・情報発信を実施することで、効果的かつ効率的なIRを行う■各国債務管理当局、国際機関との連携● IRや国際会議等の機会を活用し、債務管理当局との間で、昨今の債務管理政策をめぐる課題や債務管理政策の在り方等に関する意見交換を密に行い、関係を強化● 国際機関主催の国際会議等で、議事運営に関する提案や、海外当局・投資家向けプレゼン等を積極的に行うなど、国際機関との連携を強化海外投資家をはじめ各国債務管理当局、国際機関との連携をさらに強化へ今後の海外IRの方向性Report 48 ファイナンス 2019 Aug.

元のページ  ../index.html#12

このブックを見る