ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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特集訪日外国人旅客が急増している。今や観光地に行くとここは日本なのだろうか、というくらいに海外の人々で賑わっていることがある。外国人が最初に接する「日本」は、入国の際の税関や入国管理局の手続きではないだろうか。そこでの受け答えが日本の印象を決めてしまう、と言っても過言ではないだろう。その一方、日本国民としては、国内に拳銃や麻薬が持ち込まれないように水際で食い止めてもらわなければならない。安全だと思われている日本も、テロの脅威とは無縁ではない。迅速で快適な通関と水際での厳格な取締りの両立。これを実現するための1つの取組として、税関では、成田第3ターミナルで電子申告ゲートの運用を開始した。訪日外国人旅客数は2020年に4,000万人、 2030年に6,000万人へまずは、訪日外国人旅客の動向を見てみよう。2018年の訪日外国人旅客数は、前年比約9%増の約3,119万人に達し史上最高を記録した。国・地域別に見ると、中国がトップで26.9%を占め、次いで韓国の24.2%と続く。さらに、台湾と香港を加えた東アジア4カ国・地域で約73%を占めている。今後政府は、訪日外国人旅客数を2020年に向けて4,000万人、2030年には6,000万人まで増やすことを目指している。訪日外国人旅客数の増加訪日外国人旅客数の推移訪日外国人旅客数の国・地域別内訳(2018年)(万人)5001,0001,5002,0002,5003,0003,5004,000200620072008200920102011201220132014201520162017201820192020(年)7337336796798618616226228368361,0361,0361,3411,3411,9741,9742,4042,4042,8692,8698358358358353,1194,000東アジア4ヶ国・地域に東南アジア6ヶ国とインドを合わせると26,365,709人(シェア約85%)東アジア4ヶ国・地域(中国・韓国・台湾・香港)で22,884,048人(シェア約73%)中国26.9%韓国24.2%台湾15.3%香港7.1%東南アジア・インド11.2%欧州5.5%米国4.9%豪州1.8%カナダ1.1%その他2.2%※日本政府観光局「訪日外客数(暫定値)」をもとに作成。2017年以前は確定値。入国旅客の迅速な通関と水際での厳格な取締りの両立訪日外国人旅客数の増加とともに 税関業務の効率化が急務に次に、これに対応する税関の状況を見てみよう。税関の定員は近年着実に増加しているものの、それを上回るペースで入国者数や輸入申告件数が増加しているのが実情だ。そこで税関でも業務の効率化が急務になっている。そもそも、税関ではどのような業務を行っているのだろう。税関では、関税等の徴収を行っているが、近年では、テロ関連物資の取締りや不正薬物の取締りに対しての注目が高い。テロに使用されるおそれのある爆発物や銃器、化学兵器の原料物質等は関税法上の「輸入してはならない貨物」に指定されている。そして、実際に輸入が行われないように、厳格な水際取締りを実施しているわけだ。特に2019年以降はラグビーワールドカップ、東京オリンピック・パラリンピックなどの国際行事が予定されていることから、テロの対象になる可能性もあり、万全の対策をしなければならない。 ファイナンス 2019 Jul.3ストレスフリーで快適に旅行できる環境整備へ税関で電子申告ゲートの運用を開始

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