ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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中華そば共楽【銀座】銀座を代表する老舗が3年ぶりに復活! 店内は早くも常時満席の盛況ぶり今から遡ること60年以上前。日本が高度経済成長期に突入して間もない1956年(昭和31年)に創業し、昭和から平成にかけての銀座の中心部(銀座二丁目)の成長と発展を見守り続けてきた『中華そば共楽』。同店は、同じく銀座二丁目に店舗を構える『中華そば萬福(大正時代に創業)』とともに、「銀座」を代表する老舗ラーメン店として、数多くの人々から愛され続けてきた。このコラムをお読みの皆様の中にも、無性に『共楽』の中華そばが食べたくなり、ランチタイム開始のチャイムが鳴るや否や、地下鉄に飛び乗りお店に駆け付けた、といった記憶を持つ方も少なくないだろう。(かくいう私も、そのうちの一人だ(笑))そんな『共楽』だが、2016年3月、店舗が入居しているビルの建て替え工事のため、休業を余儀なくされ、長期休業へと突入。銀座エリアの老舗ラーメン店は、平成の後半に入ってから、店主の高齢化や建物の老朽化のため、相次いで店を畳んでいたところ。『共楽』も、休業直後は「2017年11月には営業を再開する」という情報が流れていたのだが一向にその気配がなく、「このまま閉店してしまうのではないか」と、ヤキモキしていたファンも多かったのではないだろうか。(かくいう私も、そのうちの一人だ(笑)(笑))と、そのような状況で推移していた『共楽』まわりの事情だが、2019年春先になって、どこからともなく「どうも近々、営業を再開するかもしれない」という噂が流れ始め、同年5月30日、噂どおりに待望の復活!振り返ってみれば、休業に入ってから、かれこれ3年2ヶ月もの歳月が経過していた。もちろん、再オープン当日は、この日を待ち侘びていたファンが長蛇の列を形成。あっという間に「sold out」となってしまったのは、言うまでもないことだ。同店が提供するのは、基本メニューの「中華そば」と、そのバリエーション。入店、着席した後、口頭でスタッフに所望の品目を告げ、スタッフが客の代わりに券売機で食券を購入するという「世にも奇妙なシステム」は、復活後もなお健在。おススメしたいのは、復活前からの人気メニューで、再開に当たって更なるブラッシュアップを遂げた「ワンタン麺」。煮干し等の乾物を大量に用い、日本人であれば誰もが安心感を覚える「和風味」を高らかにフィーチャー。鶏・豚等の動物系素材のコクをじっくりと丁寧に抽出し、魚介のうま味&薫りの土台として下支えさせるなど、半世紀以上かけて培ってきた技も冴えわたる。さらに特筆すべきは、ワンタンのクオリティの高さ。休業前は製麺所から入手していたワンタンの内容を、休業期間を活用して見直し、自家製へと切り替え。モッチリと食べ応えのある皮の食感は、休業前のそれとは明らかに一線を画したもの。弛まぬ研鑽の跡を看て取ることができた。ただ単に復活を遂げるだけでなく(それでも十分喜ばしいことだが)、「進化」という付加価値まで付けて戻ってきた『共楽』。令和の世に入っても、銀座のランドマークとして健在で居続けてほしいものだ。(店舗情報)住所:中央区銀座2-10-12電話番号:03-3541-7686営業時間: 月曜~金曜:11:00~18:30 土曜:11:00~16:00定休日:日曜、祝日プロフィールラーメン探究家 かずあっきぃ(田中 一明)1972年11月生まれ。学生時代に出逢った1杯のラーメンに感銘を受け、1995年より本格的な食べ歩きに着手。「ラーメンの魅力の探究」をライフワークとし、年間700杯以上のラーメンをコンスタントに実食。総食杯数は12,000杯を超える。日本全国のラーメン事情に通暁し、各種媒体にラーメン情報を精力的に発信。 ファイナンス 2019 Jul.65かずあっきぃのラーメン探訪記連載ラーメン 探訪記

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