ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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両手を合わせている各家庭の姿が見えます。1点入る度に街中から雄叫び。最終的にメッシ選手のハットトリックで3−1で勝利し、見事ワールドカップ出場を決めました。翌日の新聞の見出しは『Gracias, Messi!(ありがとうメッシ!)』。ワールドカップに向けて一気に街がお祭りモードになりました。いつもはお堅い経済レポートを共有してくれる当地のシンクタンクから、グループリーグも始まらないタイミングで、『アルゼンチンがワールドカップ決勝トーナメントのファイナルまで進む確率:100%』と予想するレポートが配信されたときは笑いました。優勝する可能性を100%としないのは、彼らなりの謙遜なのかもしれません。(2) コパ・リベルタドーレス2018決勝 (セカンド・レグ)での暴動事件 【2018年12月9日:リーベル・プレートVSボカ・ジュニアーズ】この試合は最終的にスペインのマドリッドにあるサンチアゴ・ベルナベウというレアル・マドリードのホームスタジアムで行われ、延長の末、リーベル・プレートが3−1でボカ・ジュニアーズを下しました。本来であれば、ファースト・レグをボカ・ジュニアーズのホームスタジアムで終えた後のセカンド・レグは、当然リーベル・プレートのホームスタジアムで開催されるはずだったのですが、ボカ・ジュニアーズの選手を乗せたバスがリーベル側のサポーターに襲撃される事件が発生し、試合は延期され、最終的にマドリードで行われたのでした。この襲撃の様子が日本のテレビでも動画で流されたようですのでご存知の方も多いかもしれませんが、会場入りしようとするボカ・ジュニアーズの選手を乗せたバスに対して、ホーム側のリーベル・プレートのファンらがビンなどを投げつけ、窓ガラスが割れて歓声が上がる様子は大変ショッキングでした。この2チームはともにブエノス・アイレス市をホームとするアルゼンチンの2大人気チームであり、この両者が対戦する試合はスーペル・クラシコと呼ばれるアルゼンチンの人々が最もエキサイトする試合の1つです。そして、コパ・リベルタドールという大会は、ヨーロッパでいうところのUEFAチャンピオンズリーグに該当する、南米で最も強いクラブチームを決める大会であり、その決勝でアルゼンチンの2チームが激突するということで、両チームのサポーターのテンションはまさに最高潮という中で前述の事件は起きてしまいました。アルゼンチン人の名誉のために付言すると、当然ながら大半のアルゼンチン国民はこの事件に私と同じようにショックを受け、批判し、「一部のサッカー狂には理性がない」と嘆いていました。なお、この大会の名前になっている「リベルタドール」とは解放者を意味し、つまりは南米独立運動の指導者を指す単語ですが、その名を冠する大会の決勝が元宗主国のスペインで行われるとは、何とも不思議な結末です。(3) レコパ・スダメリカーナ2019(セカンド・レグ)(2019年5月30日、リーベル・プレートVSアトレチコ・パナエレンセ)この試合は、幸運にも観戦する機会を得られました。レコパ・スダメリカーナという大会は、前述のコパ・リベルタドールの勝者と、ヨーロッパでいうUEFAヨーロッパリーグに当たるコパ・スダメリカーナの勝者が対戦する、南米で最も大きな試合の1つです。リーベル・プレートについては前述のとおりですが、対戦相手のアトレチコ・パナエレンセというのはブラジルのクリチバにホームを構えるチームで、ファースト・レグはクリチバのホームスタジアムでリーベル・プレートを1−0で下し、優位な状態でブエノスアイレスに乗り込んできていました。試合は両チームともチャンスを作りながら決めきれない展開が続きましたが、後半65分、ホームのリーベル・プレートがハンドからPKを獲得し、一度はキーパーに止められながらもこぼれ球を角度のないところから押し込み、ファースト・レグの結果も踏まえると同点に。さらに、後半ロスタイムにリーベル・プレートが2点追加し見事優勝しました。なお、アルゼンチンで行われる試合は、過去にサポーター同士の小競り合いから死者がでるような事件に発展してしまったこともあり、基本的にホームチームのサポーターしか入れません。よって私も熱狂的なリーベル・サポーターに囲まれながらの応援になったのですが、目を付けられないように、知らない応援歌などは適当に体を上下させてしのぎました。といっても実際は(勝ったからかもしれませんが、)とてもフレンドリーな雰囲気で、決勝点が入っ ファイナンス 2019 Jul.61海外ウォッチャーFOREIGN WATCHER連載海外 ウォッチャー

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