ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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大により、例年レベルのペソ安に耐えるに十分な外貨準備高があると言われていますが、もし、穀物の輸出シーズンが7月頃に終わり、市場への外貨供給量が低下する中で、8月11日予備選挙において、過激な政策を提言する候補者がトップの得票率を得るといった「悪いサプライズ」があれば、ペソ安が一挙に進むような展開も有りうるかもしれません。3 サッカー観戦記アルゼンチンは言うまでもなくサッカーの国です。決してサッカーについて特別詳しいわけではありませんが、私が滞在中に遭遇した印象に残っている3試合をご紹介させてください。(1) 2018年ロシア・ワールドカップ出場を決めた南米予選最終第18節 【2017年10月10日:アルゼンチンVSエクアドル】アルゼンチンはこの試合の前の段階では、2017年3月の対チリ戦に勝利して以降、ボリビア(2−0で敗戦)、ウルグアイ(0−0)、ベネズエラ(1−1)、ペルー(0−0)と決めきれず、ワールドカップ出場権のある4位、更には大陸間プレーオフに回る5位にも入らない6位で最終節を迎え、勝利しなければ予選敗退が濃厚という状況でした。代表監督を2回交代しても波に乗らないアルゼンチン代表チームに対する国民のフラストレーションは溜まり、その矛先は当然エースのメッシ選手に向かいます。しかも、最終節に対戦するエクアドルは高地ということもありアウェイでは過去5試合で1勝1分3敗と苦手な相手で、ネガティブな論調が目立っていました。そして、迎えた最終決戦。家のベランダからは家族皆で代表ユニフォームを着て、テレビの前で図2 アルゼンチンの主な外貨関連規制の変遷概要1ドル=1ペソ固定時代(1992年~)2001年末デフォルト後~第2次クリスティーナ政権(2011年12月~)マクリ政権(2015年12月~)流入資金滞留義務導入輸出代金の国内還流義務復活外貨取得規制導入(対外資産形成※)【2003年6月】•ホットマネー対策として海外からの流入資金に180日の亜国内滞留義務。【2005年5月】•滞留義務が365日に拡大。【2005年6月】•流入資金の30%を無金利口座に預け入れ。【2001年12月6日】(※銀行口座封鎖発表の4日後)•経済危機下で、輸出代金の国内送金・両替義務が復活。同月17日、国内還流の期限が公布。(還流期限は品目により、出荷後15日、30日、120日又は180日以内。※その後、国内還流の期限の品目構成や日数は何度も修正される。)【2011年10月】※クリスティーナ大統領再選直後•(免除されていた)石油会社・鉱山会社の輸出代金の国内送金・両替義務が復活。•1964年4月、急進党イリア大統領時代、輸出代金の国内送金・ペソ両替が義務付け。•1991年3月、ペロン党メネム大統領時代、上記義務が撤廃。※外貨取得規制の一例として、対外資産形成をピックアップ。この他にも、輸入代金支払、サービス代金支払、利益・配当の送金、対外債務返済、海外に居住する家族への仕送り、外貨建てアルゼンチン国債の購入にそれぞれ両替規制が行われた。【2016年5月】•全品目の国内還流の期限を365日に修正。【2016年8月】•全品目の国内還流の期限を1825日に(事実上の廃止)。【2017年1月】•期限を3650日に修正。【2017年11月】•同義務の廃止。【2002年9月】•個人・法人による外貨購入額の上限を10万ドル/月に設定。(※その後数後の上限引き上げ後、)【2008年11月】•外貨購入額の上限を200万ドル/月に引き上げ。(※2010年1月レドラド元中銀総裁辞任)【2010年6月】•外貨購入が25万ドル/年を超過する場合、資産・収入の証明が義務付け。【2011年10月】•外貨購入に際しては、AFIPの事前承認を得ることが条件化。【2012年4月】•ペソ建銀行口座から引き落とされるデビットカードを利用した、海外での外貨現金引き出し不可に。【2012年5月】•海外旅行用の外貨購入も、AFIPの事前承認の対象に。【2012年6月】•預金目的の外貨購入が事実上禁止。【2012年7月】•対外資産形成目的の外貨購入禁止。【2015年12月17日】•AFIPによる事前承認等、一連の外貨制限を廃止。個人・法人による外貨購入の上限は、外貨制限以前の水準である200万ドル/月に設定された。【2016年5月】•外貨購入の上限が500万ドル/月に引き上げられた。【2016年8月】•外貨購入の上限を撤廃。 ※現金による両替の上限は、2500ドル/月に引き上げ。【2015年12月】•マクリ政権発足直後に、滞留義務を120日に短縮。【2017年1月】  •滞留義務を撤廃。【2015年12月】•無金利口座への預け入れ義務は撤廃。60 ファイナンス 2019 Jul.連載海外 ウォッチャー

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