ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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2017年6月7日の夜明け前、スペインのバルセロナのように綺麗に区画整理された街並みが地平線まで広がる景色を飛行機の中から覗き見て驚いた時から、早2年が経ちました。ブエノスアイレスは気温的には日本の九州程度で、冬(6月~8月)は肌寒い日もありますが雪が降ることはありません。夏も雨が降る日は少なく日本と比べるとカラッとした気候で過ごしやすい都市です。晴れた日には、ブエノスアイレス市内にも多数ある広大な公園の芝生が日向ぼっこをする人々で溢れかえり、街には牧歌的な雰囲気が漂います。一般的にアルゼンチンといえば、リオネル・メッシ選手擁するサッカー代表チームやデフォルトを繰り返している国ということ程度しか思い浮かばない方も多いと思いますが、昨年が日本との外交関係樹立120周年であったように、日本との長い二国間の歴史を持ち、南米でブラジル、ペルーにつぐ3番目の規模となる約65,000人の日系人が存在しています。また既に100社*2の日系企業が当地に進出しており、昨年には牛肉輸出が日亜相互で解禁されアルゼンチンのおいし*1) 本文中の意見については、全て筆者の個人的な見解であり、筆者の所属する組織を代表するものではございません。*2) 外務省海外在留邦人数調査統計(2017年)い牛肉が日本でも食べられるようになるなど、経済面でも日本との結びつきを強めています。本稿では、まずは足元の経済・政治情勢につき簡単に解説しつつ、硬軟織り交ぜながら地球の裏側にあるアルゼンチンの人々の営み緩くご紹介できればと思います。1 アルゼンチン経済の特徴(1)アルゼンチン経済と米ドルアルゼンチンの経済はドル化した経済と言われております。歴史的にデフォルトおよび高インフレーション、時には預金封鎖も経験してきたアルゼンチン国民は、自国通貨ペソを信頼せず、米ドルでの貯蓄もしくは(特に外貨取得規制があった期間は)実物資産への投資を選好する傾向があります。通貨の3つの基本機能(支払決済手段、価値尺度、価値保蔵)のうち、現在のペソは価値保蔵の機能を失っていると言えるでしょう(逆に、値段表示や支払いはペソが一般的であるなど、残りの2つの機能は引き続き保たれていまFOREIGN WATCHER海外ウォッチャーアルゼンチンの肖像~ドル経済、大統領選挙、サッカー、野球、そして沖縄~在アルゼンチン日本大使館 二等書記官 仲里 康徳*1到着時に飛行機内から撮影したブエノスアイレス市の夜景ホテル到着後ベランダより撮影56 ファイナンス 2019 Jul.連載海外 ウォッチャー

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