ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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第十九回 マタギと古代織が残る集落ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?6月18日に発生した山形県沖を震源とする地震では、新潟県村上市の山北地域で震度6強を観測しました。被害に遭われた方々にお見舞い申し上げるとともに、心配下さったり支援下さった方々にこの場を借りて御礼を申し上げます。幸いなことに亡くなられた方はいらっしゃいませんでしたが、隣接する山形県鶴岡市とともに、修繕が必要な建物等が多いなか高齢化が進んでいる地域で、応急対応や迅速な復旧の難しさを痛感しています。また、新潟県は広いですが、村上市も市町村合併で広大な面積を有しています。村上市は、皇后陛下雅子さまの本籍があったところで、小和田家は村上藩士でした。震度6強を観測した地域と、村上市の中心地は直線で30km程度離れ、温泉街も被害は基本的になかったのですが、地震発生時には宿泊キャンセルが多数に上りました。情報の正確な伝達の大切さも実感しました。ちょうど10月からは新潟県・庄内エリア ディスティネーションキャンペーン「日本海美食旅(ガストロノミー)」が始まります。夏も含め、多くの方が訪れることを期待しています。その村上市山北地域にある集落の「山熊田」について書きたいと思います。全体で17世帯44人。苗字は大滝さんばかりなので、お互いに下の名前で呼び合っています。この集落は、マタギと呼ばれる集団で熊狩りをする人々が住み、その長い文化を継承しています。直木賞作家の熊谷達也氏が書いた『相剋の森』の舞台です。動物愛護論が巻き起こるなか、単に食料として熊を捕るのではなく、自然と一体となった暮らし・文化の存在が浮き彫りになっていく内容で、恋愛も交えながら読み応えのある一冊です。これ以上書くとファイナンス・ライブラリーのコーナーになりそうですが、その主人公のモデルとなった方はまだ現役のマタギで、山熊田に行くとお会いできると思います。ツキノワグマを多数確保して生計を立てているのではなく、皆本業をもちながら、春と秋の限られた時期に、年間数頭程度。文化やコミュニティを維持するために集団で狩りをしているんだ、と実感しました。例えば、仕留めたマタギから小学生まで、参加した人は平等に肉を分けたり、熊狩り後は集会所で集まったり。新潟県総務管理部長(元財務省広報室長)佐久間 寛道写真(1) 熊の手54 ファイナンス 2019 Jul.連載ニイ「ガタ」、「トキ」、書いてみませんか?

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