ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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コラム 経済トレンド61大臣官房総合政策課 尼崎 謙/前大臣官房総合政策課 荻野 修平「Ed Tech」市場の現状と今後本稿では、「Ed Tech」市場の現状、及び今後の見通し等について考察した。「Ed Tech」の誕生・2000年代中頃、インターネットの発展により、教育サービス提供者と需要者の物理的接触を必要としない「Ed Tech(EducationとTechnologyを組み合わせた造語)」が誕生した。いつでも教育サービスにアクセスできるものから、オンライン環境において距離の制約を超えたコミュニケーションを可能にするものなど、内容は多岐にわたっている(図表1)。「Ed Tech」のサービスを見ると、受験や補習向けのアプリケーションやオンライン英会話など、民間事業者によって提供されている「学校外教育」関連が多い。「Ed Tech」の市場は拡大を続けており、2023年には3,000億円を突破すると予想される(図表2)。・「Ed Tech」市場の拡大には、通信速度が飛躍的に伸びた、スマートフォンの普及により広い世代でのコンテンツ提供が可能になったことに加え、教室などの設備投資や、サービスによっては教師等に対する人件費が不必要であり、収益構造的に参入障壁が低いことが影響していると考えられる。サービス価格を低く抑えることにより一定の需要が見込みやすいと考えている事業者による市場参入が増えていると推測される。図表1 様々な「Ed Tech」サービス学習コンテンツ学習プラットフォームその他・受験サプリ/ 勉強サプリ・gacco (MOOC プラットフォーム)・Studyplus (学習SNS)・スタディサプリ・SENSEI NOTE (教員支援ツール)・Schoo・Udermy・DMM英会話などなどなど図表2 「Ed Tech」市場規模の推移1,0151,0601,1751,3331,6011,9072,1612,28225025025125225425726026442644346047849751653755801,0002,0003,0004,00020162023(年度)202220212020201920182017その他(学習プラットフォーム・支援ツールなど)コンテンツ(その他)コンテンツ(教科学習)(億円)(年度、2016年度は推計、2017年度以降は予測)「学校外教育」の現状・多くの「Ed Tech」サービス事業者が参入している学校外教育市場において、受験や補習は重要なサービス領域であると言える。(株)ベネッセによれば、中学生のうち57%は塾に通っているが(図表3)、これは、受験や補習を目的として、学校外教育を受けさせる必要性を保護者が認識しているためと考えられる。・また、学校外教育では英会話を始めとした外国語教育も大きな市場規模となっている。外国語会話教室数は2014年より上昇に転じているが(図表4)、これは、英語や他の言語を実際のコミュニケーションにおいて支障なく使用するためのニーズが高まっている中、学校教育だけでは十分にそのためのニーズに応えることができないと考えられており、学校外の語学学習に対する高い需要が生じていることが窺える(図表5)。図表3 学年別通塾割合10.935.915.015.024.124.131.740.849.642.452.654.954.952.152.154.454.456.856.862.134.634.638.438.40.010.020.030.040.050.060.070.0(%)高校3年生高校2年生高校1年生中学校3年生中学校2年生中学校1年生小学校6年生小学校5年生小学校4年生小学校3年生小学校2年生小学校1年生6歳5歳4歳3歳図表4 外国語会話教室指数の推移120(年、2010年=100)909510010511011518(年)1716151413121110092008112.6104.910096.39492.994.796.799.2101.5105.2図表5 学校授業だけで 英語を話せるようになる割合いいえ94%はい6%52 ファイナンス 2019 Jul.連載経済 トレンド

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