ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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また、在留外国人数についても同様に増加傾向にあり、平成30年末における在留外国人数は273万人と過去最高。構成比をみてみると、平成3年(1991年)には中国、韓国・朝鮮で約70%を占めていたが、平成30年(2018年)には、EPAに基づく看護師等の受入れや技能実習生の受け入れなどにより、ベトナムやフィリピンを含むアジア圏が多くを占めている。平成の時代は、モノからカネへ、グローバル化の速度が一気にシフトして世界における日本の立ち位置も貿易立国から投資立国へと変化してきた。新しい時代、日本にとってはヒトの往来の増加が大きなチャンスであると同時に様々な課題も待ち受けているのではないだろうか。*2) 生涯未婚率と同義。最近では未婚化や晩婚化など結婚観の多様化を背景に「生涯」という表現は正確さを欠くとして「50歳時未婚率」と表記・併記されることが多い。*3) 総務省の家計調査では「夫婦と子供2人の4人で構成される世帯のうち、有業者が1人だけの世帯に限定」と定義されており、昭和44年(1969年)から用いられている用語である。2ワークライフバランスが重要な時代へここから先は、個人の生活の変化、特に家族と社会のあり方に着目をしていく。日本経済が長期停滞し、賃金上昇が伸び悩む中で、家族の形も大きく変わってきた。50歳時未婚率*2は男性で約4倍(平成2年5.6%→平成27年23.4%)、女性で約3倍(平成2年4.3%→平成27年14.1%)に上昇。共働き世帯と専業主婦世帯の数も平成初期に逆転、高齢化に伴い単身世帯も平成2年の939万世帯から平成27年の1,842万世帯と約2倍に増加した。夫婦のどちらかが働いて収入を得る子供2人の4人世帯は標準世帯*3と言われるが、全世帯に占める割合は大幅に減少している。平成29年時点で、4人世帯かつ有業者1人の世帯の割合は4.6%に過ぎない。今、最も世帯数の多い類型は無業の1人世帯、次いで有業の1人世帯、2人世帯で有業者数1人、と続く。家族のカタチの多様化は、数字で見ると実感以上に進んでいると感じる。働き方に対する価値観や雇用形態も変化してきた。転職者比率は、バブル経済崩壊や金融危機の発生期には落ち込んだものの平成22年(2010年)以降は上昇傾向、足下では約5%(平成30年、2018年)となっている。非正規雇用者数については男女共に増加、平成元年にはそれぞれ229万人、589万人であったのが、平成30年には669万人、1,451万人と、約3倍弱増加している。一方で、週35時間未満の短時間就業をしている人の就業理由について推移をみてみると、「勤め先や事業の都合」で短時間就業となっている人の割合は減少傾向であり、平成30年には9.8%である。「自分や家族の都合」を理由に上げる割合は20%前後のほぼ横ばいで推移している。時短勤務など自由な働き方が少しずつではあるが可能となってきている表れかもしれない。また、育児休業に関する考え方も変化してきている。男性の育児休業取得率は女性と比べると水準は圧倒的に低いものの、平成19年度(2007年度)の1.6%から平成29年度(2017年度)の5.1%に上昇している。なお、女性の育児休業取得率は80%超で安(図16)在留外国人構成比中国17.1万人14.0%韓国・朝鮮69.3万人56.9%フィリピン6.2万人5.1%ブラジル11.9万人9.8%米国4.2万人3.5%ペルー2.6万人2.2%その他10.5万人8.6%平成3年末中国76.5万人28.0%韓国45.0万人16.5%ベトナム33.1万人12.1%フィリピン27.1万人9.9%ブラジル20.2万人7.4%ネパール8.9万人3.3%台湾6.1万人2.2%米国5.8万人2.1%インドネシア5.6万人2.1%タイ5.2万人1.9%その他39.7万人14.5%平成30年末中国76.5万人28.0%韓国45.0万人16.5%ベトナム33.1万人12.1%フィリピン27.1万人9.9%ブラジル20.2万人7.4%ネパール8.9万人3.3%台湾6.1万人2.2%米国5.8万人2.1%インドネシア5.6万人2.1%タイ5.2万人1.9%その他39.7万人14.5%平成30年末(注1)「韓国・朝鮮」について、平成23年末の統計までは、外国人登録証明書の「国籍等」欄に「朝鮮」の表記がなされている者と「韓国」の表記がなされている韓国籍を有する者を合わせて「韓国・朝鮮」として計上していたが、平成24年末の統計からは、在留カード等の「国籍・地域」欄に「韓国」の表記がなされている者を「韓国」に、「朝鮮」の表記がなされている者を「朝鮮」に計上している。(注2)平成30年末の統計における「朝鮮」の数は、「その他」に含まれるが、その内訳は平成31年4月24日時点で公表されていない。尚、平成30年6月末の統計においては、「朝鮮」の数は3.0万人。(出所)法務省「登録外国人統計」「在留外国人統計」 ファイナンス 2019 Jul.35平成を振り返る[前編]SPOT

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