ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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て、浅川財務官から、上記「途上国におけるUHCファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解」の説明が行われた。あわせて、鈴木医務技監から、共通理解の内容も踏まえ、財務当局と保健当局が連携して保健財政の構築に取り組むことは、UHC達成に向けた各国の取組の大きな後押しとなる旨、説明がなされた。続いて、世界銀行のゲオルギエヴァCEOから、財務トラックにおける議論のバックグラウンド・レポートとして作成されたGlobal UHC Financing Reportの概要について報告が行われた。さらに、一般討議に先立ち、WHOと世界銀行の連携について、両機関から現在の取組の紹介が行われた。これは、昨年発表された「グローバル金融ガバナンスに関するG20賢人グループ」による報告書において、国際公共財に係る国連機関と世界銀行の連携の促進が提言されていることを受けて、本セッションにおいても、国際公共財としてのUHCの実現に向けて両機関の協働を議題に掲げたという経緯に基づくものである。これらを踏まえて、自由討議においては積極的な議論が行われた。本セッションの最後に、「途上国におけるUHCファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解」に係る財務大臣及び保健大臣のコミットメントが確認され、翌日(29日)の首脳会議に、関連セッションの一文書として提出された。3終わりに日本はこれまで、持続可能な経済発展のためには、物的インフラへの投資だけでなく、人的インフラへの投資が不可欠であるとの観点から、強固な保健システム、特にUHC達成に向けた取組を推進してきた。特に、開発途上国における強固な保健システムの構築には、それを支える持続可能な財政制度が必須である。その構築には保健大臣だけでなく、財務大臣も強いリーダーシップを持って、必要な施策を実施することが、開発課題として重要になってくる。本セッションがかかる認識を財務大臣・保健大臣双方で共有する貴重な機会となった。<参考>「共通理解文書」概要▲経済発展の早い段階における取組の重要性▲国内資金を主な財源とした保健財政制度の設計▲国内資金を補完する形での国外資金の活用▲費用対効果があり、かつ公平な保健システムの構築▲保健危機への事前の備え・対応▲組織的なキャパシティの構築▲民間セクターの活用▲財務当局の役割と保健当局との連携舞台裏最後に、成果文書である「途上国におけるUHCファイナンス強化の重要性に関するG20 共通理解」の取りまとめの内実(?)の一部をご紹介したい。本「文書」の作成にあたっては、議長国がたたき台を作成したうえで、各国からコメントを受け取りつつ意見の収れんを目指すプロセスを経た。一口に「各国からコメント」といっても、文書の修正履歴を受け取るだけでは、どの程度こだわっているのか、どういう問題意識に基づくのかは、分からない。コメントを出した国に個別に接触し、「そのコメントはどの程度こだわるのか、どういう問題意識・ロジックに基づくものなのか」「○○国はこういうコメントを出しており、貴国コメントは方向性が異なる、柔軟性を示して受け入れる余地はないのか」と問いかけながら、リアルタイムのメールの往復や電話会議(テレコン)を通じて、数多のコメントの中から真に必要なものをあぶりだし、限られた時間の中でマルチ(多国間)の合意を作り出していったのは、対面での会合における議長役にも似て、非常にエキサイティングな経験となった。また、財務省と保健省が力を合わせてこの文書を作り上げることができた点も改めて強調したい。例えば、テレコンを開くと、相手国は財務省・保健省の両方が出席することも多く、また、相手国の財務省を相手にしていると思って何往復かメールをやり取りしていると、実は保健省の人と直接やり取りしていることに後で気づくこともあった。相手国で保健省と財務省とでミスコミュニケーションが生じた時は、厚生労働省の担当者に急ぎ頼んでその国の保健省に当たって「裏」をとってもらったこともあり、まさに今回の合同セッションのテーマさながら、財務省と保健省の協力、チームワークの重要性をかみしめたことが何度もあった。合同セッション終了後、こんなエピソードを交えながら、担当チームで会場近くの居酒屋に集まり、ビール片手にたこ焼きととんぺい焼を食べながら打ち上げをしたのは、忘れられない思い出になった。 ファイナンス 2019 Jul.29UHCファイナンスに関するG20財務大臣・保健大臣合同セッション SPOT

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