ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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1はじめに本年6月28日(金)に、大阪サミットの機会に合わせて「G20財務大臣・保健大臣合同セッション」が同地にて開催された。日本からは、麻生財務大臣、根本厚生労働大臣が出席し、議長を務めた。G20において、財務大臣、保健大臣が一堂に会する会議は初めての試みである。本セッションには、G20メンバー国、サミット招待国から22か国の財務大臣、15か国の保健大臣の他、世界銀行、世界保健機関(WHO)等の国際機関からの参加を得た(写真1)。本稿では、合同セッションに至るまでの財務省関連のUHC推進に係る国際的な取組を振り返りつつ、合同セッションの模様を報告したい。2合同セッションの概要(1)UHC推進に係るこれまでの取組日本政府のUHC推進に係る取組は、2016年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットが一つの契機となっている。同サミットでは、「国際保健のためのG7伊勢志摩ビジョン」が示され、同「ビジョン」において、「公衆衛生上の緊急事態への対応強化のためのグローバル・ヘルス・アーキテクチャーの強化」と並んで、「強固な保健システム及び危機へのより良い備えを有したUHCの達成」の重要性が強調された。2017年12月には、安倍総理、麻生財務大臣、加藤厚生労働大臣(当時)出席の下、第1回となる「UHCフォーラム2017」が東京で開催された。この会議には、開発途上国の元首・閣僚、世界銀行やWHO等の国際機関の長など、600人を含む参加者が集い、UHCの推進に向けて、持続可能な保健システムのための財源確保の必要性等を含む「UHC東京宣言」が採択された。続く2018年4月には、世界銀行・IMF春会合の主要イベントの1つとして、日本政府、世界銀行、WHO共催の下、「UHC財務大臣会合」(UHC Flagship Event)が開催された。この会合では、先述の「UHCフォーラム2017」において確認された、健全で持続可能な保健財政制度が重要性を再確認され、各国のUHC達成に向けた更なる取組の促進が謳われた。麻生財務大臣は開会式で登壇し、日本の国民皆保険制度の紹介のほか、持続可能な保健財政制度の確立のために財務大臣が果たす役割の重要性や、財務大臣と保健大臣の連携の必要性を改めて強調した。これらを踏まえ、日本が議長国となった2019年のG20財務トラックにおいては、「途上国におけるUHCファイナンスの強化」が主要議題の一つに掲げられた。そしてその成果として、6月8日(土)、9日(日)に福岡で開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、「途上国におけるUHCファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解」という一つの文書が提出され(参考:「共通理解文書」概要)、財務大臣・中央銀行総裁は会議の共同声明において、この「共通理解」へのコミットメントを確認している。(2)合同セッションでの議論本セッションではまず、麻生財務大臣と根本厚生労働大臣が冒頭挨拶を述べた(写真2)。麻生財務大臣からは、UHCを通じた健康増進が人的資本の形成に重要であり、途上国の持続可能かつ包摂的な経済成長の基礎を構築することや、経済成長の早い段階で強固な保健財政制度の構築に向けた取組を行うことが重要であることなどを説明した。続けて、根本厚生労働大臣から、UHCが所得再分配を通じた公平性の確保や社会の安定、ひいては包摂的な経済成長に貢献することを説明し、UHCの達成には財務当局との連携の必要となることが強調された。その後、G20財務トラックにおける成果の報告としUHCファイナンスに関する G20財務大臣・保健大臣合同セッション国際局 開発政策課 課長 三好 敏之/同 開発政策調整室長 津田 尊弘/同 国際保健専門官 大浦 大輔/同 環境調整第二係長 執行 奈々美28 ファイナンス 2019 Jul.SPOT

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