ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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や、経験豊富なスタッフによる綿密な情報共有の体制によって、誰一人交通事情によって会議に遅刻するといった事態なく終えることができました。6リエゾン(陰の立役者たち)このような大規模な国際会議が開催される際には、各国代表団の滞在がスムーズなものとなるように、「リエゾン」と呼ばれる専属のロジ担当要員を代表団ごとに任命することが慣例となっています。今回のG20福岡においては、各国の財務省・中銀がそれぞれ別の代表団として参加するため、全体調整を行うリエゾン連絡役を含めて全部で63名ものリエゾン体制となりました。財務省本省だけではこれだけの人数を準備できないため、全国の財務局や税関から多くの職員の皆さんにこの役目に当たっていただきました。日本に初めて来る人も多い代表団にとって、困った時になんでもお願いできる存在がリエゾンであり、文字通りヒルトン内を駆け回って、各国からの要望の調整に努めていただきました。国によっては、無茶な要望を言ってくることもある中で、我々事務局ですべての要望をさばききることは到底できないため、リエゾンの皆さんには本当に助けていただきました。某国財務大臣は出発予定時刻にパジャマのままで部屋から現れたり、移動のためのバスに、全員が乗るまで自分は乗らないとわがままを言う某国中銀総裁がいたりと、想定することもできないような事態が多々生じましたが、現場での機敏な判断で臨機応変に対応いただいたリエゾンの皆さんには事務局としても本当に感謝しています。代表団からも、日本のリエゾンは本当にきめ細やかに要望を聞いてくれて助かったという感謝の声が多数聞かれました。また、この機会に代表団と仲良くなってカラオケに行ったり、記念品を交換したりしたリエゾンもいたと聞いています。7まとめ今回のG20福岡については、かかわる人数の多さ、準備にかける期間の長さ、動かす金額の大きさ、どれをとっても私が過去に携わったプロジェクトとして最大のものでした。同時に、6月8・9日のG20福岡だけでなく、1月に椿山荘で開催された代理級の会議、4月にワシントンDCのIMF世銀春総会の際に開催されたG20財務大臣・中央銀行総裁会議、6月28・29日のG20大阪サミットの際に開催された財務大臣・保健大臣合同セッションについても、G20議長国としてロジを担当したため、これらの会議準備を全て並行して進める、ということが我々チームとしては大きなチャレンジとなりました。また、開催地が地方であることから、地元福岡のチームと綿密にコミュニケーションをとっていくことが重要なキーとなることは、当初から強く意識しており、ウェブ会議のシステムを駆使し、定期的に開催する全体会議の場には必ず福岡財務支局の準備本部のメンバーにも同席いただく等、全体として密な情報共有を心がけました。もちろん、プロジェクト管理の常として、外生的な要因による突然の方向転換や、直前になって人海戦術的に作業が生じてしまった部分は多々あり、ああしておけばよかった、こうしておけばよかったという、個人的な反省点は数え上げればきりがありません。しかしながら、我が国が経験したことのないこれだけの規模の国際会議を、議長として、事故なく、参加者に満足いただける形で、遂行することができたのは、ロジにかかわったすべての者の自信となりましたし、誇ってよいことだと考えています。冒頭に申し上げた通り、本稿がこうした国際会議を支える縁の下の力持ちの働きに、少しでも光を当てるものとなりましたら幸いです。福岡空港の歓迎の様子 ファイナンス 2019 Jul.27G20福岡財務大臣・中央銀行総裁会議を終えて SPOT

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