ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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「租税回避及び脱税への継続的な取組み」の2つのセッションに麻生大臣やムニューシン米財務長官などの11か国の財務大臣等とOECDのグリア事務総長が参加し、登壇者からは、国際租税に関する課題解決に向け、国際社会が協調して取り組んでいく強いコミットメントが示されました。本シンポジウムの開催に当たっては、OECDと緊密に連携し準備を進めた他、福岡財務支局や財務省内部からも応援があり、当日は、各国政府代表団に加え、研究者、実務家も含め総勢約250名が参加する盛会となりました。以下ではシンポジウムにおける議論の概要を紹介します。《セッション1 経済の電子化に伴う課税上の課題》セッション1では、麻生大臣の他、中・仏・尼・英・米の財務大臣が登壇し、グリアOECD事務総長の司会の下、経済の電子化に伴う課税上の課題への対処方法や作業計画の評価、コンセンサスを得るための条件等が議論されました。(麻生大臣)経済の電子化に対応するため、国際課税原則の現代化及び多国間でのアプローチが必須。解決策の1つ目の柱は、オンライン広告等の新たなビジネスモデルに対応する必要。電子化の影響以上に国際課税原則を見直せば経済に負の影響がありうるため、新たな課税権の対象は適切に制限すべき。2つ目の柱に関し、「底辺への競争」に以前から強い問題意識がある。日本は、2つの柱からなる解決策を支持。合意に向けて、電子化の影響は切り分けが難しいとの認識の下、既存の国際課税制度と両立し、紛争防止・解決メカニズムを強化した、ルール変更で大きな負の影響を受ける国がない仕組みが必要。政治的な関与による後押しも必要。(その他のパネリスト)▲2つの柱からなる解決策を支持。効果的な執行のため、支援と実施状況のモニタリング等も検討すべき。(中リュウ財政部長)▲2つの柱について国際合意を急ぐべき。解決策が合意できれば国内で検討中の暫定的措置は取り下げる。(仏ルメール大臣)▲高度に電子化されたビジネスが創造した価値は既存の国際課税原則で適切に課税されていない。作業計画の合意を歓迎し、価値の創造された場所で課税すべきという考え方を支持。(英ハモンド大臣)▲一方的な措置の動きを懸念。合意に向け、政治的なガイダンス、妥協の精神等が必要。合意の時期が重要であり、特定の産業に差別的な措置に反対。また、簡素で運用可能な手法である必要。(米ムニューシン長官)▲デジタル経済の成長は各国の税収に反映されていない。2つの柱からなる解決策はこの問題に対処できると期待。提案の明確化と、例えば、重要な(経済的)存在の基準等の技術的検討が必要。(尼スリムリヤニ大臣)《セッション2 租税回避及び脱税への継続的な取組み》セッション2では、浅川財務官の司会の下、亜・豪・独・印・南アフリカの財務大臣等及びグリアOECD事務総長が登壇し、BEPSプロジェクトや税の情報交換に関するこれまでの進展や、国際租税に関する今後の課題について議論を行いました。各大臣からは、経済の電子化への対応を含むBEPSG20福岡と国際租税SPOT20 ファイナンス 2019 Jul.

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