ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
23/80

G20と国際租税租税回避及び脱税への対抗や税関連の途上国支援といった国際租税分野の取組みは、G20の成功事例とされ、近年大きく進展してきました。他方、現行の国際課税原則が経済の電子化によるビジネスモデルの変容等に十分に対応していないという大きな課題が残されており、国際租税は引き続きG20における主要アジェンダの1つとなっています。経済の電子化への対応については、2020年までの長期的解決策の合意に向け議論が進められてきました。約130もの国・地域の税の専門家で構成されるBEPS(税源浸食と利益移転)包摂的枠組み(IF:Inclusive Framework on Base Erosion and Prot Shifting)における精力的な議論の結果、2019年5月に合意に基づく解決策の策定に向けた作業計画が合意されました。今回のG20では、この作業計画の提出を受けて2020年の合意に向けてどのように議論を加速していくかが大きな課題でした。また、租税回避及び脱税への対抗については、2012年に立ち上げられたBEPSプロジェクトの下、IFに参加する国・地域においてBEPS対抗措置の実施が進んでいる他、昨年までに90か国・地域の税務当局間で非居住者の金融口座情報の自動的交換が開始されました。税制への信頼を維持するため、今後も租税回避及び脱税に効果的に対処する必要があります。こうした中で、日本議長下においては、(ア)経済の電子化への対応、(イ)BEPSへの対応、(ウ)税の情報交換に関する取組み、(エ)税に関する途上国への能力構築支援、を4つのテーマとして議論を進めてきました。G20財務大臣会合今般の福岡会合においては、2日目に国際租税に関するこれまでの取組みと今後の対応が議論されました。会合では、多くの参加者から、租税回避や脱税に対抗するためには多国間主義に基づく取組みが必要であり、(イ)BEPSプロジェクトを引き続き支持していくとの見解が示されたほか、(エ)税関連の途上国支援強化に関する支持が再確認されました。最も議論となった(ア)経済の電子化への対応に関しては、2020年までにコンセンサスに基づく解決策を見つけるための取組みを更に強化することに大臣間で合意するとともに、IFから提出された作業計画が承認されました。この作業計画においては、(1)多国籍デジタル企業などが恒久的施設(いわゆるPE)がないまま活動する国に対して、課税権を配分する国際課税原則の見直しと、(2)軽課税国への利益移転に対し、最低税率による課税を実質的に確保するルールを導入する、という相互補完的な2つの柱について一緒に検討を進めることや、2020年1月に解決策の大枠について合意し、2020年末までに最終報告書を取りまとめるといった今後の具体的な検討の進め方が示されています。G20が経済の電子化への対応という困難な課題に対し、このようにハイレベルな政治的コミットメントを与えリーダーシップを発揮したことは、速やかな解決策の合意に向けた鍵となるでしょう。この他、(ウ)税の情報交換をさらに強化し脱税等に対抗するため、税に関する金融口座情報の交換などの進捗やその成果を確認するとともに、昨年強化された国際的な税の透明性に関する基準を満たしていない国の暫定的なリストが公表されました。G20国際租税シンポジウム本分野における国際協調を更に高めるため、日本議長下では、G20の開幕に先立ち、主要な先進国・途上国の財務大臣等が一堂に会するシンポジウムを企画しました。「経済の電子化に伴う課税上の課題」と主税局参事官 細田 修一G20福岡と国際租税SPOT ファイナンス 2019 Jul.19

元のページ  ../index.html#23

このブックを見る