ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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保健大臣合同セッション」が開催されました(本誌28~30頁「UHCファイナンスに関するG20財務大臣・保健大臣合同セッション」参照)。このセッションにおいて、財務当局と保健当局の連携の具体的なあり方について深い議論が行われたほか、途上国におけるUHCの推進に向けた世界保健機関(WHO)と世界銀行の連携について意見が交わされました。そして、本合同セッションにおいても、「途上国におけるUHCファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解」への財務大臣、保健大臣双方のコミットメントを確認することができました。今般の成果を受け、日本は引き続き途上国におけるUHCの推進に向けた議論をけん引していきたいと考えています。〈低所得国における債務問題〉近年、低所得国を中心に公的債務が累積し、こうした諸国の債務の持続可能性が懸念されています。また、近年の状況として、新興債権国や民間債権者からの融資や、担保付貸付などの複雑な融資手法が増加しており、こうした借入れについての透明性が欠けていることが、公的債務の脆弱性の増大につながっているとの指摘もなされています。低所得国の債務問題への対処にあたっては、低所得国が、財政管理の強化を図り、債務データの収集・管理を適切に行っていくなど、自ら努力していくことが重要です。しかしながら、低所得国による取組だけでは十分ではなく、官民の債権者や国際社会による取組も不可欠です。こうした観点から、G20は、債務の透明性を向上し、債務の持続可能性を確保するための、債務国及び公的・民間の債権者双方による協働を促してきました。今回のG20では、そうした三者の協働の重要性を再確認すると共に、それぞれの取組の具体的な進展を確認することができました。第一に、債務国側における取組として、国際通貨基金(IMF)及び世界銀行グループが、現在、新たに生じつつある債務脆弱性に対処するための「様々な角度からのアプローチ」の下、債務国の能力強化を含む、様々な取組を実施しているところであり、G20は、両機関による取組の直近の進捗を確認し、これを歓迎しました。G20は、両機関が引き続き取組を実施していくことを支持しています。また、G20は、両機関に、ソブリン(国)に対する担保付貸付の慣行の分析を引き続き深めることも奨励しました。第二に、公的債権者側の取組として、G20は、「G20 持続可能な貸付に係る実務指針」の実施に関する任意の自己評価を行い、その評価結果と政策提言をまとめたIMF及び世界銀行グループのノートを歓迎しました。自己評価には、G20の15か国・地域だけでなく、非G20の5か国も加わり、この取組を成功裏に終わらせることができました。G20は、貸付慣行の改善を目指して、このノートで強調されている課題を引き続き議論していくこととしています。第三に、民間債権者側の取組として、国際金融協会が、民間貸付に係る債務の透明性及び持続可能性を向上させるために、「債務透明性のための任意の原則」を策定しました。この取組はG20から支持され、フォローアップへの期待が示されました。〈EPG提言を受けた政策課題〉本年のG20財務トラックでは、2018年10月にG20財務大臣・中央銀行総裁に提出された、「グローバル金融ガバナンスに関するG20賢人グループ」による最終報告書における提言(EPG提言)のフォローアップにも取り組みました。議長国として日本は、EPG提言のうち、6月の大阪サミットまでに何等かの具体的成果が期待できる提言に集中的に取り組むことを提案しました。バイ・マルチのドナーと被支援国の協調メカニズムであるカントリー・プラットフォームの効果的な構築に関しては、G20原則の策定に向け議論を行う一方、民間資金の一層の動員に向けた多国間投資保証機関(MIGA)の積極的活用に関しては、新たな標準契約書の作成及び複数のMDBsとの協力合意などといった成果をあげることができました。また、債務透明性の向上に向けた技術支援の強化や、国際公共財に関する課題に対応するための世界銀行と関連国連機関との協調促進の試みとしての、UHC推進に向けた世界銀行と国連機関の協調を促すこと等を目的としたG20財務大臣・保健大臣合同セッションの開催、作業部会の整理などメリハリをつけた運営、大臣級・代理級での開発金融に特化したセッションの開催、なども日本議長下での具体的な成果です。成長力強化に向けた取組について18 ファイナンス 2019 Jul.SPOT

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