ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
21/80

イン・データベースが、関連国際機関により作成されました。日本としては今後、能力構築などを通じて、「質の高いインフラ投資に関するG20原則」が非G20メンバーも含め広く普及するよう努め、質の高いインフラ投資が実施に移されるよう積極的に取り組んでいきたいと考えています。〈自然災害に対する強靭性の強化〉自然災害に対する強靭性の強化は、日本が有する知識と経験を世界と共有するため日本が重要な開発課題の一つとして位置付け取り組んできたテーマです。とりわけ、保険メカニズムを通じ民間資金を積極的に活用することで、財務上の強靭性の強化を図る「災害リスクファイナンス・保険」スキームは、太平洋やカリブの島嶼国、東南アジア地域を対象に日本が世界銀行等と連携し主導的に推進してきた取組です。世界各地で自然災害が増加する中、日本はG20議長国として、こうした「災害リスクファイナンス・保険」スキームを活用した財務上の強靭性強化を財務トラックの主要議題に掲げ、各国・地域の成功事例を取りまとめ、その普及啓発を図ることを目標に据えました。まずキックオフとして、本年1月に東京で開催したG20財務大臣・中央銀行総裁代理会議に合わせ、財務省・世界銀行・ADB共催で「包摂的な開発のためのイノベーションに関するセミナー」を開催しました。同セミナーには、G20各国や国際機関、民間セクターや市民社会団体から幅広い関係者が集い、自然災害に対する財務の強靭性強化に向けた課題や方策について議論するとともに好事例を共有することができました。そして、本年6月福岡でのG20財務大臣・中央銀行総裁会議共同声明において、自然災害に対する財務上の強靭性を促進させる手段としての、災害リスクファイナンス・保険スキームの重要性を認識するとともに、世界銀行による報告書「災害ショックに対する財務上の強靭性の強化:グッドプラクティスと新たなフロンティア」を、マクロ経済・財政計画の策定を通じたものを含む、災害リスクファイナンスに係る手法に関する知識を広げることに役立つものとして言及しました。災害リスクファイナンスなどの自然災害に対する財務上の強靭性を強化する取組は、質の高いインフラ投資によってもたらされる持続的な成長の基盤を一層強固にするものです。日本は引き続きこの分野で主導的な役割を果たしていきたいと考えています。〈途上国におけるUHCファイナンスの強化〉成長力を強化するためには、物的インフラへの投資だけでなく、人的インフラへの投資も重要です。この観点から、本年のG20財務トラックにおいては、途上国におけるUHCの達成に向けた持続可能な保健財政(ファイナンシング)の実現も議論しました。G20財務トラックにおいて保健財政を課題として正面から取り上げたのはこれが初めてです。UHCとは、「全ての人々が経済的困難を伴うことなく必要な質の高い保健サービスを享受すること」を言います。世界銀行が2018年秋に立ち上げたHuman Capital Projectでも指摘されているとおり、健康は人的資本の蓄積に貢献し、ひいては持続可能な経済成長の基礎となります。日本はこの観点から、世界におけるUHCの推進に積極的に取り組んできました。UHCを実現するためには、効果的な保健システムとともにそれを支える強固な保健財政制度を構築することが不可欠です。これを踏まえ、本年のG20では、UHCの推進が急務であり、それによる経済や社会へのインパクトが大きいと見込まれる途上国における成長力強化の取組の一環として、これら諸国における保健財政の強化を重点課題としました。本年1月のG20財務大臣・中央銀行総裁代理会議以降、世界銀行等の国際機関や各国保健省からのインプットも得ながら、財務当局間でUHCの推進に向けた保健財政の重要性、その構築に当たり財務当局が考慮すべき事項について議論を行い、本年6月のG20財務大臣・中央銀行総裁会議において、「途上国におけるUHCファイナンス強化の重要性に関するG20共通理解」へのコミットメントを確認することができました。この共通理解には、経済発展の早期段階にUHCを推進することの重要性や、国内資金を主な財源とする制度設計、財務当局と保健当局との連携の重要性といった、保健財政制度の構築に当たって留意すべき重要事項が掲げられています。これに関連して、大阪サミットに合わせて6月28日(金)に「G20財務大臣・ ファイナンス 2019 Jul.17SPOT

元のページ  ../index.html#21

このブックを見る