ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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リュー・チェーン)の拡大などもあり、為替相場の変動が経常収支に与える影響を含め、グローバル・インバランスを取り巻く様相は大きく変わりつつあり、専門的な知見を有するIMFによる更なる分析が期待されます。(3)高齢化高齢化は、日本を始めとする先進国だけでなく、G20に参加する多くの新興国においても、今後、急速に進むことが見込まれています。健康寿命の伸長は世界中の人々にとって朗報である一方、財政・金融・金融システムなど、経済運営のあらゆる側面に大きな影響を及ぼすものであることから、高齢化の進捗を見越して、十分な政策対応を検討することが重要です。また、高齢人口の増加を踏まえた金融包摂のあり方についても検討を深める必要があります。一方、G20に参加する国々は、(1)高齢化が相当程度進んだ日本を始めとする先進国もあれば、(2)高齢化が本格化しつつある国(アルゼンチン・中国など)、(3)現役世代の拡大が続き、高齢化が本格化するには時間がある国(サウジアラビア・インドネシアなど)、といったように多様であり、高齢化の進捗度に応じ、直面する政策課題に大きな違いがあるのも事実です。こうした点を踏まえ、福岡G20では、G20史上初の試みとして、前述の高齢化の度合いに応じて3グループに分けた分科会で議論を行った上で、全体会合でG20全体に通底する政策課題を検討しました。以下、福岡G20において特定された、高齢化の進捗に対応した政策行動をご紹介します。・スキルへの投資、女性・高齢者における労働参加率促進、高齢者に優しい産業の育成などによる生産性及び成長の向上。・公共支出・投資の効率性や実効性の向上、世代間及び世代内の公平性に考慮した機能的かつ財政持続的な社会保障の強化。・高齢化がもたらす課題により良く対応するための公正で成長を促す税制の設計。・金融政策に対する高齢化よるインプリケーションのより良い理解。・金融機関がそのビジネスモデルとサービスを必要に応じて適応できるよう支援。・人口動態変化による国境をまたがるインプリケーショの管理(資本移動や移民など)。以上に加え、G20福岡では、「高齢化と金融包摂のためのG20福岡ポリシー・プライオリティ」(GPFI(金融包摂のためのグローバル・パートナーシップ)・OECD策定)も承認されました。(4)結語世界経済の一体化が急速に進む今日にあって、世界のGDPの85%以上を代表する国々の財務大臣と中央銀行総裁が一堂に会し、率直な議論を交わしつつ、国際協調を進めていくことの重要性は、一段と高まっています。こうした中、今回、麻生副総理及び黒田総裁が議長を務めたG20福岡会合の開催を通じ、G20が政策目標として掲げる、「強固で、持続可能で、均衡ある、包摂的な成長(SSBIG)」の実現に向け、議長国として、少なからぬ責務を果たせたのではないかと自負しています。最後に、G20福岡会合の成功に向けご協力を賜った、G20参加各国、国際機関、日本銀行・金融庁その他関係省庁の方々、また、遠来の賓客を手厚くおもてなし頂いた地元福岡の皆様方に厚く御礼を申し上げ、筆を擱くことにしたいと思います。 ファイナンス 2019 Jul.15SPOT

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