ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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G20には、先進国・新興国の双方を合わせ、世界のGDPの85%を超える国々が参加しています。こうしたG20の枠組みは、世界主要国の財務大臣・中央銀行総裁が、世界経済が直面する現下のリスクや様々な課題について率直に意見を交わし、国際的な政策協調を行うためのフォーラムとして、大きな役割を果たしていると言えるでしょう。日本が議長国としての役割を担ったG20福岡では、世界経済について、現状とリスク、グローバル・インバランス(世界的な経常収支の不均衡)、高齢化の3つのプライオリティに焦点を当てた議論を行いました。以下では、3つのプライオリティごとに議論の概要と主な成果を紹介します。(1)世界経済の現状とリスク世界経済の現状やリスクを継続的にモニターすると共に、必要に応じ、国際協調を進めることで、「強固で(Strong)、持続可能で(Sustainable)、均衡ある(Balanced)、包摂的な(Inclusive)成長(Growth)」(SSBIG)を実現することは、G20、特に、財務大臣・中央銀行総裁が率いる“財務トラック”に求められる中心的な政策課題です。G20サミットが創設された2008年末以来、G20は、リーマン・ブラザースの破綻を端緒として始まった世界的な金融危機の克服を始めとして、大きな役割を果たしてきました。金融危機が去った今、G20には、成長を下支えする観点から、これまで以上に、長期的・構造的な政策課題に注力することが求められていますが、同時に、世界的な景気変動や、世界経済が直面する短期的なリスクについても、不断のモニタリングが重要です。足元、多くの国において、失業率が歴史的に低い水準にあることは喜ばしいことではありますが、リーマンショック前と比べると、経済成長は低位に留まっています。特に、昨年後半にかけては、当初想定されていたよりも、世界経済が減速しているのではないかとの見方も示されていたところです。幸い、2019年に入ってからは、緩和的な金融環境の継続や、一部諸国による経済刺激策による下支え効果などもあって、世界経済は安定化の兆しを見せてはいます。しかし、一方で貿易や地政学的な緊張の高まりもあり、より大きくなる下方リスクへの対処が求められています。【主要国・地域の実質経済成長率(前期比・年率換算・季節調整済)】2018Q12018Q22018Q32018Q42019Q1アメリカ2.2%4.2%3.4%2.2%3.1%日本▲0.4%2.3%▲2.6%1.8%2.2%ユーロ圏1.6%1.6%0.5%1.0%1.6%ドイツ1.5%1.8%▲0.8%0.1%1.7%フランス1.3%0.6%1.0%1.7%1.4%イタリア0.9%0.0%▲0.5%▲0.4%0.5%中国6.1%7.0%6.6%6.1%5.7%(出所)OECDこうした中で開催された福岡G20では、世界経済について、足元で安定化の兆しを示し年後半から来年に向け緩やかに上向くとの見通しを共有する一方、リスクは下方に傾いており、何よりも、貿易や地政学的な緊張が増大していることを認めました。その上で、様々な下方リスクから成長を守るため、全ての政策手段を用いるとのコミットメントを再確認しました。このほか、福岡G20では、貿易について、成長・生産性・イノベーション・雇用創出・開発のための重要なエンジンであると位置付けた上で、多角的貿易体制の重要性などを謳った、昨年12月のブエノスアイレス・サミットにおける首脳の合意を再確認しています。(2)グローバル・インバランスグローバル・インバランス(経常収支の不均衡)は、リーマンショック後にG20サミットの枠組みが創設されて以来、繰り返し、様々な議論が交わされてきた論点です。その様相は、過去10年の間に、世界国際局国際機構課長 緒方 健太郎G20福岡 世界経済(リスクと課題): 日本議長下での議論と成果12 ファイナンス 2019 Jul.SPOT

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