ファイナンス 2019年7月号 Vol.55 No.4
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―2008年のリーマン・ショック直後、初のG20サミットで、当時の麻生総理と総理秘書官として浅川前財務官が出席されましたが、10年を経て今回、また御二人でこのG20の議論をリードされたことについて、どのようにお考えでしょうか。麻生総理(当時)には、私は総理秘書官としてお仕えしましたが、百年に一度といわれたリーマン・ショック後の世界金融危機の対応に追われた1年でした。ただ、私が大蔵省・財務省で蓄積した知識を基に色々な政策を検討していく過程で、麻生総理とは本当に実のある議論が出来たと思います。麻生総理は2008年11月の第1回のワシントンG20サミットから、2009年4月の第2回のロンドンサミットまで出席されましたが、日本の経験を踏まえた麻生総理の様々な提言というのは、大げさに聞こえるかもしれないのですが、本当に世界を救うような「知恵」に溢れたものでした。第1回ワシントンサミットの際、G20の首脳では唯一、「麻生提案」というペーパーを配って、世界金融危機を克服するための解決策を各国の首脳に提示するなど、麻生総理の貢献は非常に大きかったと思います。その中で、例えば90年代後半の日本の金融危機の経験を踏まえ、不良債権の処理はどのようにすればスムーズに行えるか、公的資本の注入はどのタイミングで重要か、といった点について、具体的に提言を行いました。また、何よりもあれだけ大規模な世界的な金融危機に対しては、その処方箋もグローバルな枠組みが必要と考え、いち早く日本がIMFに対して1,000億ドルを融資してその資金基盤を増強しようという提言をしたところ、日本に続いてアメリカ、EU、中国やロシア等諸外国も融資を行うことに合意してくれました。結果的に、IMFをはじめ世銀やADBなどの世界の国際機関の資金基盤が一気に増強され、それがリーマン・ショック後の世界金融恐慌の克服に役立ったことは間違いないと思います。そういう意味で、当時の日本のリーダーシップというのは大変なものであり、創生期のG20の議論を間違いなくリードしていました。今は危機モードではなく平時モードであり、当時とは状況が違いますが、むしろ平時だからこそ、長期的な世界経済の成長や安定に役立つ、グローバル・インバランスや高齢化といったアジェンダを設定し、生産的な議論をリードし、コミュニケを採択することが出来ました。リーマン・ショックから10年が経ち、世界経済の課題は以前とは様変わりしましたが、麻生大臣の貢献というのは今回も非常に大きかったと思いますし、それに私が少しでもお役に立てたのであれば、この上ない幸せです。(以上) ファイナンス 2019 Jul.11SPOT

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