ある国から支持されていても、別の国からは反対意見があるなど、難しいアジェンダもありましたが、議論すべき論点を落とすわけにはいきません。各国への早期の根回しが功を奏し、最終的にはかなり包括的でありながら、焦点を絞った議題設定が出来たと思います。また議事運営に関して議長国として工夫を凝らした点というのは、例えば先程申し上げた、高齢化の小グループディスカッションを設けたことが挙げられます。また、通常のG20会合では世界経済の現状から議論が始まりますが、今回は開発問題を財務大臣としてしっかり議論していただくとの観点から、G20会合において開発問題から議論を開始したというのも初めてのことだと思います。更に、時間通りの議事進行に努めるべく、その場で大臣方に手を挙げて頂き、その順番に発言頂くのではなく、事前に各国の希望を踏まえてスピーカーを割り振りました。こうした議長国として細かい気配りをした結果、議事が滞りなくスムーズに行われたという側面もあったのではないかと思います。―日本議長後のG20に期待されていることについてご意見伺えますと幸いです。日本が工夫して議題設定をした結果、いい議論ができたと思いますので、福岡で取り上げたいくつかの論点に関しては、これを今回だけで終わらせずに、次回以降も是非フォローアップして欲しいと思っています。特に、今回質高インフラのG20原則を初めて承認しましたが、これは承認しただけでは意味が無く、現実に合意した中身をG20参加国全体で守っていかなければならないわけです。そのために、合意した内容をしっかりモニタリングしていく必要があることを次のG20議長国、その次の議長国にもしっかり認識して頂きたいと思っています。もう1つは経済の電子化に伴う課税上の対応です。今後の作業計画を承認し、「国際課税原則(PE原則)の見直し」と「軽課税国への利益移転に対抗する措置の導入」という二本柱について検討を進めることに合意しました。2020年までに結論を得るということになっているので、次の議長国のサウジアラビアに大いに期待したいと思っていますが、最終的には作業計画で提示した論点をもれなく議論し、政策的に実効性があり、かつ有意義な結論を得る必要があります。そのために日本も引き続き、前議長国としてサポートしていきたいと思っています。―G20にとどまらず、今後の国際社会、国際経済における日本の果たすべき役割についてお考えを伺いたく存じます。日本は今まで経済大国であり、例えばODAや、人材派遣などで世界に貢献してきましたが、これからは知恵や知見を活かして、世界経済の安定・発展に貢献していく場面が益々増えていくのだろうと思います。日本は高齢化については勿論課題先進国ですし、金融危機についてもリーマン・ショックの10年前、1990年代の後半に既に経験していたので、その処方箋については多くの蓄積がありました。日本の持っているお宝であるこうした知恵や経験を国際社会に還元しながら、日本としてむしろ国際社会の色々な議論をリードしていかなくてはいけません。状況に対応するだけではなくて状況を自ら作り出してゆく、日本もいよいよそういう段階になったのだという自覚を持って、頻繁に行われる種々の国際会議に対応していく必要があります。我々の真価がまさに問われる時代になったのだと思います。G20福岡の全体総括と今後10 ファイナンス 2019 Jul.SPOT
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