ファイナンス 2019年6月号 Vol.55 No.3
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コラム 経済トレンド60大臣官房総合政策課 德田 雄大医療・介護セクターの拡大による マクロ労働生産性への影響本稿では、高齢化の進展で医療・介護分野が拡大する中、これらの分野の労働生産性が低い水準のままにとどまれば、マクロ的な労働生産性が低下していくことを示す。高齢化に伴い医療・介護への支出は増加・一人当たりの医療・介護費用は、年齢が高いほど大きいため、高齢化の進展は、医療・介護費用の増加をもたらす。(図表1)。・このことは、マクロ的な医療・介護サービス(保健衛生・社会事業)の生産が、経済全体の生産に占める割合が上昇していくことを意味する(図表2)。・それに伴って、医療・介護サービスの生産に従事する就業者の比率も増加する傾向にある(図表3)。※SNAの「保健衛生・社会事業」の内容は、医療・保健、介護、(政府)保健衛生、(政府)社会福祉、(非営利)社会福祉とされている。図表1 年齢階層別一人当たり医療・ 介護費(2016年)年齢階層(万円)(歳)一人当たり国民医療費・介護費02040608010012035-3945-4955-5965-6975-79医療費介護費図表2 高齢人口比率と医療・ 福祉サービス生産2000年2017年5.56.06.57.07.5(%)(%)保健衛生・社会事業比率(財、対支出計)高齢人口比率16.018.020.022.024.026.028.0図表3 高齢人口比率と医療・福祉関連の就業者高齢人口比率保健衛生・社会事業比率(就業者)(%)(%)2000年2017年y=0.5834x-3.1167R²=0.98346810121416182022242628(注1)高齢人口比率は、総人口に占める65歳以上人口の比率(注2)「保健衛生・社会事業比率(生産)」は、実質GDPに占める、保健衛生・社会事業の付加価値の割合(注3)「保健衛生・社会事業比率(就業者数)」は、就業者数に占める保健衛生・社会事業の就業者数の割合医療・介護サービス生産増加による就業者数増加の見通し・今後の高齢化の進展による高齢人口比率の上昇(図表4)と、高齢人口比率と就業比率の関係(図表3)を前提として、機械的に推計を行うと、保健衛生・社会事業の産業別就業者の就業者全体に占める割合は、2017年の12.6%から、2030年に15.1%、2040年には17.5%に達する見込み(図表5)。図表4 将来人口推計02,0004,0006,0008,00010,00012,00014,00019701980199020002010201520202030204020502060(年)推計(万人)(注)2015年までは実績、2015年以降は推計値。-64歳65歳-総人口図表5 保健衛生・社会事業の就業者比率(試算)20000510152025303540(注)2018年以降は当課推計。2018年以降は図表3における回帰式と、国立社会保障・人口問題研究所の将来推計人口をもとに、機械的に延伸した。(年)12.6(2017)15.1(2030)17.5(2040)18161412864201020(%)42 ファイナンス 2019 Jun.連載経済 トレンド

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