ファイナンス 2019年6月号 Vol.55 No.3
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(11)沖縄海邦銀行(沖縄県)同行のみでは資金支援を行うことが困難な案件に対しても、沖縄公庫との協調融資によりリスク分担をすることで融資を実施。実務者レベルで、情報共有や事業計画の作成支援等を行う*17ことにより、ノウハウを習得するとともに支援メニューを多様化するなど、事業者支援策が拡大。このように見ると、地域金融機関と日本公庫等の連携は、地域金融機関にとって、リスクの軽減を図りつつ、より顧客の要望に応えた形での金融支援ができることに加え、創業や事業承継分野等における審査ノウハウの蓄積にも有益であることが見てとれる。また、後述のとおり、日ごろから職員同士が顔を合わせておくことは、些細な事でも相談しやすい関係の構築に役立っており、実際の融資にもつながっていることが分かる。以上、紙面の都合上、事例の一部を取り上げる形としたが、その他の事例も含めた全26事例について、財務省HPを参照していただければ幸いである。https://www.mof.go.jp/financial_system/fiscal_nance/renkei/renkei_jirei201904.html4今後に向けて昨年に引き続き、地域金融機関から事例を収集する中で、日本公庫等と有機的な連携を実現している事例についての報告が多くある一方で、連携・協調にはまだ課題もあるとの声も聞こえてきている。例えば、「金利や制度が柔軟性に欠ける」、「融資の実行に時間がかかりすぎる」といったようなものである。特に、日本公庫においては、これまでも連携・協調を行ってきたが、昨年からは、より一層力を入れているところである。地域金融機関との関係では、セミナーの共催や協調融資商品の創設に加え、役員レベル及び現場における対話を通じた「顔の見える関係作り」に取り組んでおり、これにより、融資の現場で生じたあらゆる課題を迅速に解決するとともに、日ごろから意思疎通を図ることで互いの認識をすり合わせ、*17) このほか、沖縄公庫との間にそれぞれ連絡窓口を設けており、連絡窓口間においても1~2か月に1度の機会で意見交換を実施*18) 日本公庫は、民間金融機関と連携した支援に関する資料を作成し、資金調達手段の多様化や経営課題解決に必要な情報の増加等といった協調融資により期待される効果について、顧客に対して説明を行うこととしている官民連携の新たなステージでの連携を進めている。また、協調融資の推進には、顧客の理解も重要であることから、日本公庫の役割や協調融資によって期待される効果*18を顧客に丁寧に説明するよう努めている。前掲の事例でも紹介した通り、地域のニーズは多様であり、望ましい官民連携のあり方もそれぞれ異なる。しかしながら、地域経済の活性化という観点から見れば、官民いずれの金融機関においても、事業者が直面している課題に向き合い、どのような支援が必要か議論し、それぞれの強みを生かしながら連携して地域企業を支えていくのが、どの地域にとっても望ましい姿ではないだろうか。財務省HPにて公表している連携事例集には、本稿で紹介した他にも、創業・事業再生・事業承継といったテーマを中心に、商工会や民間企業との連携など、金融機関のみにとどまらない様々な支援のあり方やスキームも掲載している。地域経済の活性化に貢献し、ひいては日本経済の持続的な成長に寄与するべく、官民の金融機関を始めとした地域の各機関の連携を推進する方策の検討に際し、これらの事例が参考となれば幸いである。今後も引き続き地域金融機関へのヒアリングを実施し、優良な事例を収集・公表してまいりたい。〈参考文献〉・ 田部真史(2010)「政策金融について(総論)」『ファイナンス』2010年7月号・ 片桐聡(2018)「政策金融の意義について」『ファイナンス』2018年5月号・ 大塚悠貴、矢野智史、比留間邦宏(2018)「日本政策金融公庫と地域金融機関との連携状況について ~創業を中心として~」『ファイナンス』2018年5月号 ファイナンス 2019 Jun.39政府系金融機関と地域金融機関との連携状況についてSPOT

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