ファイナンス 2019年6月号 Vol.55 No.3
34/70

1概要欧州復興開発銀行(EBRD:European Bank for Reconstruction and Development)の第28回年次総会が、本年5月8日(水)及び9日(木)の2日間、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボにおいて開催された。EBRD年次総会は、加盟国・機関の代表(財務大臣、中央銀行総裁など)が一堂に会するEBRD最高の意思決定の場であり、1年に1回開かれる。今次総会には、EBRDに加盟している67ヶ国・2機関(欧州連合及び欧州投資銀行)の代表や政府関係者、ビジネス界関係者、国際機関やNGO関係者などが多数参加した。ホスト国であるボスニア・ヘルツェゴビナ政府を代表して、ズビズディッチ閣僚評議会議長が参加。また、カタイネン欧州委員会副委員長が総務会議長としての役回りを担った。我が国からは、うえの財務副大臣を筆頭とする代表団が参加した。2主な議論今次総会の最も重要なトピックは、2021年以降5年間の「戦略・資本枠組み(SCF:Strategic and Cap-ital Framework)」の準備作業に関する総務決議案の採択であった。EBRDは設立協定上、5年に一度、今後5年間の業務戦略を定め、その戦略を実施するための資本規模が十分かどうかを検討することを義務づけられている。2021年から2025年の次期SCFに関しては、来年のロンドン年次総会にて最終決定される予定だが、EBRDの資本を活用するオプションの中には、EBRD受益国の地理的範囲の拡大のような、EBRDの将来に大きな影響を及ぼしうるオプションも含まれることから、来年の議論に先立ち、準備作業の方向性に問題がないかどうか、今次総会にて議論を行った。日本は、うえの財務副大臣の総務演説において、従来からEBRDの地理的範囲の拡大には慎重であるものの、地理的拡大は検討オプションの一つに過ぎない位置づけとなっていること、来年のロンドン年次総会における総務判断を先取りしないことが担保されていることを踏まえ、総務決議案を支持する旨を表明した。そのうえで、EBRDが地理的範囲を拡大すべきか否かについては、EBRDが中東欧諸国の市場経済化というマンデートを地理的にも機能的にも大きく超えた活動を行うことが正当化されるのか、EBRDが新たな拡大先で付加価値を生み出す能力があるのかといった本質的な議論が不可欠であることにも言及した。また、EBRDが限られたリソースを最も効果的かつ効率的に活用するためには、中央アジア・コーカサスの多くの国々やモンゴルといった、市場経済化の遅れている初期段階移行国(ETCs:Early Transition Countries)に対する支援を十分に行う一方、中欧やバルト諸国など、市場経済化への移行が比較的進んだ受益国(ATCs:Advanced Transition Countries)について欧州復興開発銀行 第28回年次総会について国際局開発機関課 開発機関第五係長 森嶌 洋子今次総会のメイン会場となった国会議事堂 (Parliamentary Assembly Building)30 ファイナンス 2019 Jun.SPOT

元のページ  ../index.html#34

このブックを見る