ファイナンス 2019年6月号 Vol.55 No.3
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1はじめにアジア開発銀行(ADB)の第52回年次総会が、5月1日(水)から5日(日)までの5日間、フィジーのナンディにおいて開催された。ADB年次総会は、各加盟国の総務(財務大臣など)が年に一度会合する機会であり、1966年の東京での創立総会の後、1968年の第1回年次総会以降、毎年開催されている。今回のADB年次総会は、太平洋島しょ国での初めての開催で、ADBに加盟している68か国・地域の財務大臣、中央銀行総裁や政府関係者、財界、学術関係者、報道関係者、国際機関、NGOなどが多数参加者した。ホスト国のフィジーからは、バイニマラマ首相が開会式に出席したほか、カイユム経済大臣(フィジー総務)が議長としての役回りを担った。我が国からは、麻生副総理兼財務大臣(日本国総務)、黒田日本銀行総裁(総務代理)をはじめとする日本政府代表団のほか、金融機関関係者や報道関係者、NGO等が参加した。2総会の概要(1)開会式5月3日(金)に行われた開会式では、バイニマラマ首相が、フィジーにおける近年のインフラ分野での発展等について紹介した。また、フィジーのみならず太平洋地域全体の問題であるとして、気候変動対策の重要性を強調した。次に、中尾総裁から、ADBの太平洋地域における業務は近年増加傾向にあること、また、同地域の11か国にカントリーオフィスを設置することなどを紹介した。さらに、2018年7月に採択された、ADBの2030年までの長期戦略である「戦略2030」について言及し、貧困や格差への対処、保健及び教育分野への業務拡大、ジェンダー平等の加速化、気候変動への対応、地域統合の促進、民間部門の業務拡大の6つの分野が「戦略2030」の実行において特に重要であるとして、各分野におけるADBによる取組を説明した。(2)総務セミナー5月4日(土)午前に行われた総務セミナーでは、「持続可能な開発に向けた観光業の役割」をテーマに、BBCキャスターのゼイナブ・バダウィ氏がモデレーターを務め、麻生副総理のほか、カイユム経済大臣、スリ・ムルヤニ・インドネシア財務大臣(インドネシア総務)、ヴィゴロッティ・イタリア経済財政省国際局長(イタリア総務代理)及び中尾総裁がパネリストとして参加し、活発なディスカッションが行われた。セミナーの中で、麻生副総理は、観光客の安定的な受け入れのためには、空港や宿泊施設などの観光インフラの整備が不可欠であり、量と質の両面から整備に取り組むことの重要性を強調した。また、近年、外国人観光客数が大幅に増加している日本の現状を紹介し、ソフト面(訪日プロモーションの強化、ビザの戦略的緩和、消費税免税店の拡大など)、及び、ハード面(地方空港のゲートウェイ機能強化、顔認証ゲート等の最先端技術を活用した出入国審査の実現、宿泊施設、観光バス乗降場、公衆トイレの整備促進など)の両面での取組に言及した。また、来年の東京オリンピック・パラリンピックの開催に向けて、首都圏空港の更なる機能強化などを行っていることについても紹介した。(3)ビジネスセッション(各国の総務演説)5月4日(土)午後に行われたビジネスセッションでは、カイユム経済大臣の議事進行の下、加盟各国の総務による演説が行われた。日本からは、麻生副総理が演説を行い、(1)ADBの限られた資源を有効に活用するためには、所得の低アジア開発銀行 第52回年次総会について国際局開発機関課課長補佐 阿部 正流/国際局開発機関課第二係長 向井 和博28 ファイナンス 2019 Jun.SPOT

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