ファイナンス 2019年6月号 Vol.55 No.3
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(意見)● 日本の借金が1000兆円を超え、更に増え続けている一方、人口減少、超高齢社会と共に社会保障費がひっ迫している中、どの様に財政バランスを取って行こうとしているのか。寿命が延び高齢者率が急速に高くなる(年金、医療、介護等の費用負担が必然的に増える)日本の社会の中で、国家財政と社会保障費のバランスが取れなくなるのは目に見えているのではないか。ポピュリズムは決して悪いとは言わないが、耳障りのいい事だけを言い、負担を次世代に付け回すのではなく、この実情を改革する具体的工程を明確にしていかないと、次の世代のモチベーションは上がらず、ネガティブスパイラルに落ち込むのではと心配している。● 日本財政の悪化、税負担増、社会保険料増、医療費の窓口負担引き上げ、年金の給付減etc. 将来が不安で仕方がない。恐らく国民の8,9割が私のように感じているのではないか。本当に希望のある未来を描くことが出来るのか。新しい時代にふさわしい未来像を示していただきたい。(榊原会長)財政健全化の議論を出口が見えるような、将来の希望が持てるような議論にしてほしいという、切実なご意見と思う。その答えが、ご指摘にあったような根拠のない楽観論を振りまくようなポピュリズムであってはならないことは当然のこと。まずは2025年度のPB黒字化を実現し、その上でこの高齢者数がピークを迎える2040年代半ばごろまでの中長期的プランというのをしっかりと構築し、リスクマネジメントの観点に立った財政運営というものを行っていくことが肝要。財政健全化の議論を出口が見える希望の議論に変えていくためや、国民に財政健全化を自分の問題として理解して受けとめていただくためにも、中長期的な推計を土台にして、包括的な財政健全化プランの選択肢を提示していくべきといった意見が分科会の中にも多く出されている。(意見)● 後期高齢者医療への人口は増加する一方で、支える生産人口の減少により公費に頼らざるをえない状況をどう打破していくのかについては、日頃窓口に来られる高齢者と接する中で強く感じるところ。社会保障・税の一体改革の財源とする消費税についてもその使途は流動化しているように感じている。令和という新たな時代を迎え、また2040年問題を考えるうえで、後世にこれ以上の財政負担をかけないためにどこに焦点をあてて議論し進めていくのか、方向性についてお聞きしたいです。(増田会長代理)消費税率の引上げで幼児教育の無償化が実現することは、受益と負担の対応関係がより実感しやすくなったという見方もできる。その上で財政健全化に向けては、社会保障の給付と負担の見直しのため、中長期を見据えた継続的な取組みを行っていく必要があり、受益と負担の関係の「見える化」や、両者の相互牽制関係を通じてコスト意識を高める滋賀県、奈良県、大阪府のような取組みを全国展開していくことが重要。また、今後の診療報酬改定や介護報酬改定の在り方も議論していく必要。26 ファイナンス 2019 Jun.SPOT

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